01
―――ドサッ
『…んっ……。』
乱暴に投げられ、小さなうめき声をあげた。今の衝撃で意識を取り戻したハルは、まだ覚めきらない頭で状況を確認する。
動かせない身体。みれば袋に身体全体が覆われており、自由が効かない。さらには手錠、足枷もされているようだ。
ハルには何の効力もないのだが、海楼石の手錠の可能性が高いだろう。
『……っ!?』
目の前に見える足を辿り顔をあげれば、緑色のフードをかぶったロビンが、目を伏せたままそこへ座っていた。
「…目が覚めたみたいね。」
『ロビン!ここは?』
「海列車の中…。もうすでに駅を出てしまった、今の貴女に逃げ場はないわ。」
眈々と言い放つロビン。少女は何とか態勢を立て直し、椅子に背をもたれるように座る。
ガチャガチャと嫌な音を立てる手錠や足枷に眉をしかめるも、何かに気がつき不意に顔をあげた。
『言わなかったのか?』
「…何をかしら。」
『あたしが能力者じゃないってこと。だから海楼石の手錠、されてんの?』
黙ったままに何も答えない彼女に、ハルはふわりと笑みを浮かべた。
『この列車はどこに行くんだ?』
「…エニエス・ロビーよ。」
『……。』
きょとんと目をまるくする少女に、ロビンは窓の外を見つめながら告げる。
「世界政府直属の"司法の島"。そこにある正義の門をくぐれば、私のような罪人は最後…。貴女のような賞金首も、インペルダウンへと連れて行かれてしまうでしょうね。」
『インペルダウン?よくわかんないけど、みんなと離れるのはイヤだな…。早く逃げないと。』
「………。」
スッと立ち上がる影に顔をあげる。すると窮屈だった身体を纏う布がはらりと床へと落ちた。
「手錠と足枷は私にはどうすることも出来ないわ。今のうちに早くここから逃げなさい。」
『ありがとう、ロビン!足枷は大丈夫だ。』
一瞬にして引きちぎられる足枷の鎖。自由になった足元にほっと息が漏れる。
『行こう、ロビン。』
「……。」
『ロビン!!』
一向に目を合わせようとしないロビンに、ハルは手を伸ばす。
「言ったでしょう。」
その手は彼女に届くことなく直前で止まった。
「私は貴女たちの元へは帰らない
。お別れだって…。」
『あたしはそんなの認めない!いきなりそんなこと言われて、素直に引き下がれるわけないじゃん!!』
「私は貴女たちを裏切った!こうして世界政府と手を組んで、貴女たちに罪をなすりつけたの!」
珍しく声を荒げるロビンに、思わず黙り込む。しかし、うつむくロビンの背後にある窓から見えた人物に、短い声をあげた。
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