01
『ビビ…』
「…どうしたの?」
ルフィが眠るベッドの横に座るビビ。ハルは逆隣のベッドに横になっていた。
『あたし…争いを止められなかった。爆弾も…阻止出来なかった。……ビビのために、この国のために何も出来なかった…っ、ごめん…』
「……ハルさん」
ハルの小さな声は部屋にいた仲間全員に聞こえていた。ナミは小さく微笑むと「バカね」と呟き、寝たままの少女の頭を叩く。
『……っ…』
「あんたは精一杯やったでしょ!あんたがいなきゃダメだったときが、何回あったと思ってんの?」
「そうよ…、それに国民たちが言ってたわ。空色の瞳の少女に叱られたって」
クスッと笑うビビは優しくハルの頭を撫でる。
「ハルさんでしょ?」
<何で人と人が戦わないといけないんだよ…、おまえらのために…何とかしようとしてるやつがいるのに…っ、おまえらのこと大切に思ってるやつがいるのに……っ、あたしの仲間を泣かせんな!!>
『………知らない』
「ふふっ…、その少女に会ったらこう言いたいとも言ってたわ。」
"私たちは少女の言葉を無視して彼女に殴りかかりました。しかし少女は何をするわけでもなく、私たちを傷つけることなく姿を消したのです…"
"あのときは申し訳なかった…。大切なことを気づかせてくれた彼女にお礼を言いたい…"
「ありがとう、って」
『……っ…』
「貴女はみんなと一緒にちゃんと国を救ってくれたわ、国は国民がいてやっと国なの。だからハルさんは…、みんなは私にとって本当の英雄(ヒーロー)なのよ?」
ビビの温かい手、優しい口調。ハルはぐっと口をしめた。口を開けば『リナリー』と呼んでしまいそうだった。
「あら、どうしてハルが涙ぐんでるの?あんたはその少女じゃないんでしょ」
からかうナミの言葉にぐいっと目もとを拭うと、むすっとした表情で起き上がった。
『これは違う!泣いてないもん!』
「もう…相変わらず可愛いわーっ!!」
『わ…っ』
抱き着くナミに押されながら、黙ったままハルの左足を見つめるチョッパーに気づいた。
『……チョッパー』
「おれ…、医者なのに…っ、何にも出来ねぇのか?」
『…治療するだけが医者じゃないよ。そう思ってくれるだけで十分だ。ありがとう』
「でも…っ、おれだってハルのためになんかしたいんだ!」
納得いかない様子のチョッパーにハルはふわりと笑い、ピンクのハットを優しく押す。ぐっと沈むハットにチョッパーの表情は見えなくなった。
『なら水、ちょうだい』
「え…」
『あたし動けないからさ、お願い』
顔を上げたチョッパーは嬉しそうに「おう!」と返事をすると、水を取りに行く。そんな彼をハルは目をほそめ嬉しそうに眺める。その笑顔に一味はぽーっと見とれていたのだった。
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