02
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目を覚ましたら知らない場所にいた。
私を心配してくれていたみなさんは、私が目を覚ましたことを喜んでくれていたけれど、全員どこで知り合ったのかも分からない人たち。
"リナリー"と呼ばれる綺麗な女の人が、顔を覆って泣き始めたときには、申し訳なくて胸が痛かった。
『わ…私、いつになったら…おばさんのところに、か…か帰れますか?』
目の前を歩く白い帽子をかぶった男の人。"コムイ"と名乗ったその人は、ずっと悲しげな眼差しで私を見る。
「検査が終わってからだよ…。」
コムイさんは笑顔で答えてくれるけど、やっぱり表情はいいものじゃない。
初対面なのに、なんでわかっちゃうんだろう…。
『あの…わ、私!ど…どこに、倒れてたんですか…?』
「……ラビ君の任務先でね。あ、ラビ君っていうのは紅い髪の子いただろう?あの子だよ。」
目を覚ましたとき、手を握ってくれていたあの人?だからあんなに心配してくれてたの?
―――ガチャ
「とりあえずここの部屋、使ってくれるかな?」
コムイさんという人に連れられてきた部屋は、どこか懐かしい雰囲気の部屋で、私の好みと類似していた。
『まるで私の部屋みたい…』
「……っ…!?」
息を飲んだ彼。不思議に思って見上げると、目をそらすように踵を返す。
「じゃ…じゃあ、僕は行くよ。何かあったらさっき行った室長室にくるといい…」
それだけを告げると、コムイさんはあっという間に部屋を出ていってしまった。
ひとり残された私は、ぼふっとベッドに座り込む。近くの机には写真たてがあるけど、何も飾られてない。ただ手紙が添えてあった。
『これって…?』
―――コンコン…
遠慮がちに叩かれた扉。恐る恐る返事をすれば、ゆっくり廊下の光が射し込んでくる。
「す、少し…貴女と話がしたくて。」
『……ど、どうぞ』
私が中へと促すと、リナリーさんという方はゆっくりと歩み寄って、部屋の中をしみじみと眺めていた。
「部屋は変わらないのにね…」
『え…あの?』
「な、何でもないのよ」
私の隣に座った彼女はふと、私の持つ手紙に目を止めた。
「そ…それは?」
リナリーさんの言葉に私はハッとして、慌ててその手紙を差し出す。
『な、中は見てないので!す…すすみません!!』
頭をさげるけど、リナリーさんはその手紙を受けとると、勢いよくそれを読み始める。
何が書いてあるのかも、誰からなのかもわからない。けどその手紙には、確かに"リナリーへ"と書かれていた。
『え…と。あの…?だ、大丈夫…ですか?』
無意識に声をかけていた。だって彼女は、その手紙を読みながらぽろぽろと涙を流していたから。
片手でそれを拭いながら、見る限り短いその文面を、何度も何度も読み返す。
「……ハル…っ」
私の名前を呼びながら。