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『わざわざすみません…』
駅までの道の途中、ハルは何度もこうやって謝る。その度にオレは「大丈夫さ」と答えていた。
無事任務を終えたハルを送ると言えば、もちろん彼女は慌てて断る。けど結果的にオレの押しに負けたハルが頷いたことで、今こうして隣を歩いていた。
「どうよ、初任務の感想は?」
『に…任務、ですか?』
「立派な任務さ〜」
ハルは照れたようにうつむくと、ぽつりぽつりと教えてくれる。
『ラビ…たちの任務に比べたら、こんなことでって思うかもしれないけど…、とっても緊張したんです。』
「…ん。」
『でもコムイさんたちが気晴らしに…って言ってくれて、とっても嬉しかったのも事実なんです。』
「そっか」
優しく頭を撫でると嬉しそうに目を細めるから、オレは一層その手に心を込めた。この手からオレの想いが全部伝わればいいのに。
「もう着いちゃったさ〜」
『真っ直ぐに行けば、あっという間なんですね…。』
駅を前にしてハルは目をまるくする。その言葉の意味を聞きたくてしょうがないオレは、うずうずしながらも汽車の時刻表を調べた。
タイミングよく10分後に発車するらしい。オレ的にはもっと遅くてよかったさ…。
「ハルー。10分後に出るみたいさ。」
『あのっ、す…すみません!わ、わざわざ調べてもらって!自分でしなきゃいけないのに……』
相変わらずおどおどと頭をさげるけど、ハルの桃色の綺麗な瞳はしっかり……とは言わずともオレを見ている。
仕方ないさ…。
ハルに見つめられたら追求するのも忘れて、緩む頬が耐えられない。
「またさ…」
『…?』
「また今度もハルがオレのとこ、資料届けてほしいさ。」
言っている間に恥ずかしくなって頬を掻けば、ハルは目をまるくした後、頭を抑えながら嬉しそうにうなずいた。
『あ…で、でも私の本業は科学班だから…、でで…でも、行けるように頑張ります!』
そんな可愛い言い方されちゃ、オレも我慢の限界さ。へらっと力無く緩む表情。
なんて、オレは馬鹿だったさ。
―――ドォオオン
『ひゃあっ!?』
「AKUMA!なんでここに!?」
駅に停まっていた列車は破壊され、激しく炎上している。悲鳴をあげてしゃがみこむハルを、オレは咄嗟に抱きしめた。
『い…っ。ら…らび…、あ…あく、ま?』
「大丈夫…。ハルはオレが護る」
ハルは腕のなかで頭を抱えて、カタカタと体を震わせる。恐怖のあまり、体は強ばり立ち上がることも出来ないようす。
「ここで待っとけ?」
オレはやむなくハルを端に連れていくと、鉄槌を手に駅で暴れるAKUMAを倒しに向かった。
震える彼女を放って。