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『………ん…』


「ハルっ!!」



目を覚まして最初に視界に入るのは真っ赤な髪の毛。誰のものかなんて考えなくても彼しかいない。

『ラビ…?』


名前を呼べば少し垂れた目を細めてほっとしたように笑ってくれる。



『……ここは?』

頭だけを動かして辺りを確認すると、どうやら談話室のソファーに寝かされてるみたい。



「もうびっくりしたさ!ハルがまた倒れたって聞いてオレ任務ジジイに任しちまったさー」

『え…っ』

「丁度行くときに聞いちゃって…、そわそわしてたらジジイに"落ち着かんのなら帰れ"って言われちゃったさ!」


優しく言ってくれるラビを見て何だか胸の辺りがもやもやした。いつもならぽかぽかと温かくなるのに…。



『あの…今からじゃ、間に合いませんか…?』

「へっ…?」

聞き返してくるラビの翡翠色の綺麗な瞳を見つめながらもう一度言った。


『今からブックマンさんを追っても間に合いませんか?』

「オレの鉄槌なら間に合うけど…」

『行ってくれませんか?』


ラビは不思議そうに私を見下ろすけど、私は罪悪感でいっぱい。



『……心配してくれたのは…とても嬉しいです。…けど、任務はちゃんと…行かないと……、行ってほしいと…思って……』

「ハル…」


私の名前をぽつりと呟くとラビは荒っぽく頭を掻いて立ち上がってくれた。



『…あ!ち、違うんです!』

「え?」

慌てて声をあげる私にラビはきょとんと目をまるくする。


だって今のじゃまるであのAKUMAと戦うことを望んでるみたいに聞こえちゃうから…。そんなこと1ミリも望んでないのに…。



『極力AKUMAとは戦わないで…、傷つかないでほしいんです…。けど…それが"エクソシスト"の仕事なら……やり抜いてほしくて…、…今のラビは"黒の教団"の…ラビだから。…えと……』

うまく言えない私の言葉を黙ったまま聞いてくれる。ラビはいつもそう。


私は安心させるために起き上がって笑顔をつくる。

『…私は大丈夫です!だから任務に行ってきてください』


生意気言ってることは重々承知だけど、ラビに任務を放棄してほしくなんかなかったから。



一度くしゃっと頭を撫でられたけど、その時のラビの表情は不安げに見えて胸が痛んだ。





…迷惑をかけてばかり。ここに来て何度その表情を向けられたかわからない。


ラビだけじゃない。コムイさんにもリーバーさんにも他のみんなにも…。安心すらさせてあげられない。



「わかった。コムイとリーバーにはハルが起きたって言っとくさ」

『…はい、ありがとう…ございます』






だからせめて…








『ら…ラビ!』


部屋を出ようとする彼に声をかけて、精一杯の笑顔を向ける。



『いってらっしゃい…っ』




ラビは一瞬驚いたみたいだったけど、ゆっくり頬を緩ませてニッと笑ってくれた。

いつもみたいなぽかぽかする笑顔で。



「行ってくるさ!」

それが嬉しくて自然に緩む頬。勝手に笑ってしまう。


ラビは「じゃあな!」と告げて部屋を出ていってしまったけど、そのあとも一時の間頬は緩んだままでした。







 


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