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『お休み…ですか?』
「あぁ!」
意気込んで研究室へ入るも、笑顔のリーバーに言われた一言に拍子抜けしてしまった。
「明日からしっかりやってもらうから今日はゆっくり休んでくれ。」
なんて言われても、ハルにはこれといってすることもなく頭をかしげる。
「部屋で休むもよし。この教団内を探険、把握するもよし。好きに使ってくれ」
『……は…はい…』
研究室を追い出され一時間。ハルは一人廊下を歩いていた。
『…どうしよう』
部屋でじっとしているのも落ち着かなかったハルは、教団の内部を把握するため歩き回っていたのだが…。
『……迷っちゃった』
辺りを見回しても似たような壁と扉ばかり。自分が今どこにいるのかもわからない。
ハルが行ったことがあるのは食堂に資料室、医務室、神田と出会った稽古場にラビの部屋。
そのどの部屋も近くにはなく、確信的な迷子だった。
『……っ…』
進めば進むほど暗い方へ向かっているような気がして足を止める。
見た目通りというか、予想通りというか、ハルは怖がりだ。目の前に広がる暗闇にカタカタと身体を震わせていた。
後悔しても遅い…
『じっとしてればよかった…』
教団の構造上、小さな声で呟いても壁や床、天井に反響して予想より大きく響く。
『…っ!!』
わかってはいるけどそれすら怖いハルは壁に手を添えながら、ゆっくり歩みを進めていった。
コツコツと響くヒール音に一人怯えながらも、誰かいないか辺りを見回しながら歩く。
『あ…』
角を曲がると人影が歩いているのが見えた。
『あ…あの…っ!』
明らかに知らない人物だが、今の状況になりふり構ってはいられないハルは縺れる脚を動かしながら人影を追う。
『ま、まい…迷子に…なっちゃって…、あの…研究室へは…』
何とか言葉を並べるハルは人影を見上げた瞬間、さぁーっと青くなった。
「……あ゙…ぁ…」
『ひ…っ…!!』
桃色の瞳を見開くハルを青白い顔をした男が、ぼーっと見下ろしている。
『……ぁ…っ…』
あまりの恐怖にハルはふっと気を失い、そのまま倒れてしまった。