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『リーバーさん、これ…どうですか?』

「………よし!いいぞ。室長のとこ持ってってくれ。」

「ハル、ついでにこれも!」

「あっ、これも頼む!」


あちこちから飛び交う言葉にハルは慌てて駆け寄る。

大分馴れてきたのか、最近ではジョニーやタップと仲良くなったようで楽しそうに見えるのは勘違いではないだろう。



しかし驚くべきことは別にあり、本当に17歳なのかと疑ってしまうほどの知識と才能。誰がここまで予期しただろうか。

ここへ来てたった1週間とちょっとで仕事を覚えた少女に、俺達は感心するしかない。


室長の部屋へ入っていくハルの小さな背中を見詰めれば、それは扉によって見えないものとなってしまった。
























『コムイさん、これ…』

「ちょっとハルちゃーん!まとめて持ってこないでよォ!」

『えっ…あ、すみません…。』


しゅんとするハルちゃんに僕は小さく笑ってしまう。彼女が感情を露にする様子が見れて満足だから。

最初は話すにもうつむきがちで合うことのなかった桃色の瞳も、今ではそれがどれだけ綺麗なものかよく見える。


少しずつ、本当に少しずつだけど変わっていくだろうハルちゃん。




君をここへ連れてきたことは間違っていなかったのかい?




あの住み慣れた町にいたかった、と言われてももうどうしようもないけれど。



『あのコムイさん…』

「なんだい?」


普段資料を渡すとそそくさと出ていってしまう彼女が僕に資料を手渡した今、まだこの部屋にいることはとても珍しい。

少し言いづらそうに目を泳がすと、ぽつりと小さく呟いた。



『リナリーは…いつ帰ってきますか?』


なんだ、そうゆうことか。

僕は口許が緩むのを感じながらハルちゃんの頭を撫でてやる。もう僕が触れても肩を震わせたりなんかしなくなった。


「2日前に出たばかりだろう?あと1週間はかかるよ。」

『………そ、そうですよね…。』


眉を下げて無理やり笑う少女は一礼して謝ると、相変わらず資料でいっぱいのこの部屋を出ていってしまった。



二人はあまり一緒にいれなかった。リナリーに任務が入ってしまったから。入れたのは僕だけど、他に人がいなかったんだから仕方がないじゃないか。



アレンくんもラビもすぐに任務に行ってしまって、彼女とはあまり話ができてない。



きっと帰ってきたとき、ハルちゃんと僕ら科学班の仲がぐんと良くなってるのを見て、すごくはぶてるんだろうね。

そんな二人を見てあの子はおどおどしながらリーバーくんに助けを求めるんだ。


そういえばまだ神田くんと会わせてないなぁ…。大丈夫かな。


これまでリナリーで一杯だった僕の脳内を小さな少女が侵していく。

彼女がここに来てからというもの、僕は戦争なんて忘れてしまうんだ。こんな想像もできちゃうんだからね。



一人クスッと笑う僕は小さな少女が持ってきた数枚の紙に判子を押した。




 


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