02












――――………




「ああ…ほら、紅流。鳥が北へ還って行きますよ。」


空を羽ばたく複数の鳥を見上げながら笑う。


「…紅流。鳥が自由だなんて誰が決めたんでしょうね。」

その言葉に見上げれば、彼もまたまだ空を見上げていた。




「たとえ思うがままに空を飛べたとて、辿り着く地も…羽を休める枝もなければ、翼を持ったことさえ悔やむかもしれない。







本当の自由は…」






………――――




――ざッ



「は…っ」


昨夜つけられた腹の傷は激しく痛む。朱泱との決着をつけたばかりの三蔵は、腹部を抑えながら森を抜けていた。



まだ新しい傷に痛みは増すばかり。

あの時、無意識に庇ったのは悟空じゃない。


俺の中の深い傷痕。

未だ消えることのない痛み。




<自分が誇れるだけの強さで>


《誰かの為》になんて死んでたまるか。残された《誰か》の痛みがわかるから。



あいつらもまた、自分の為に大切な人間を失っている。たった少しの間、俺が目を覚まさないくらいで、ぎゃあぎゃあ泣きわめくあいつを放ってなんていけない。


また同じ思いはさせたくない。





俺は



俺の為に生きて


俺の為だけに死ぬ





それが俺の誇り(プライド)…。









―――ジャリ…



森を抜けて顔をあげれば、そこには見慣れた獣と一台のジープ。


「お客さん何処までー?」

「初乗りいちまんえんだよン!」


「………」




にっと笑う悟空と悟浄に、三蔵は青筋をたてながら頭をかく。手にしていた小銃を後部座席に座る悟空へぽいっと投げると、定位置である助手席に乗った。


「西に決まってンだろ、俺は寝る!起こした奴は殺すぞ。」

「はいはい。」



八戒はいつものことだと穏やかに微笑む。

キラに乗っていたハルは、目を閉じる三蔵をじっと見つめており、彼もまたそれに気がついていた。



「なんだ…。」






『おかえり、さんぞー?』


ふわりと笑う少女に紫色の瞳を見開きながらも、つられて思わずふっと笑った。








<還るべき場所のあることかもしれませんね…。>





『おやすみなさい。』











本当の自由の在り処


















mae ato
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