01
『なんで!?なんで行かせちゃったの!?』
三蔵が目を覚ました次の日。少女の大声が宿屋にこだまする。
彼女に咎められているのは赤髪の男。苦笑しながら小さな少女を見下ろしていた。
『まだケガがひどいじゃん!なんで止めなかったの!?』
「心配せんでも生臭坊主が簡単にくたばるわけねぇだろ?オレらはここで待ってましょうよ、ハルちゃん。」
『けど、けどあの人はさんぞーの友達で!…二人が争うなんて……ヤダよぉ』
ポツリと呟きながらうつむくハル。悟浄は何も言わずに、亜麻色の頭をくしゃっと撫でた。
「ハル。」
どこか拗ねた様子の少女の名前を呼んだのはその片割れ。今度は彼女がしゅんとする番だ。
「三蔵は六道(アイツ)のために行ったんだ。自分の友達を救いに行ったんだよ…。」
『………』
「だから…黙って帰り、待っとこうぜ?」
リクの言うことに小さくうなずく。悟浄もホッとし、椅子に座った。ハルもとぼとぼとうつむきながら、ベッドに座りこむ。
「どうぞ。」
そこへミルクの入ったカップを手した八戒が声をかける。黙って受けとる彼女のとなりに座ると、いつものような穏やかな笑みを浮かべた。
「あの人なら大丈夫ですよ。悟浄の言うとおり、簡単にヤられちゃうわけないじゃないですか。」
『…うん。』
―――ガチャ
「なぁなぁー!サンゾー迎えに行こーぜ!」
勢いよく入って来たのはイタズラに笑う悟空。一行はきょとんと目をまるくする。
「ジープで乗って待ってんの!ゼッテェびっくりするじゃん!やろーぜ!!」
「そうですねぇ…。」
ちらっととなりの少女に目をやれば、まだ目をまるくして悟空を見ていた。
「ハル。行きましょうか。」
『う…うん!』
ぱぁっと笑顔を取り戻した少女を見て悟浄や八戒、リクがホッと胸を撫で下ろす。
「馬鹿猿にしてはいいはたらきだな。」
「そーだな、馬鹿猿にしてはな。」
「え、何!?オレ褒められてんの?けなされてんの?」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ三人の後ろを小さな笑みを浮かべながらついて行く二人だった。