02

 



『……悟空?』

「………」

「あれが"妖力制御"の封印から解き放たれた生来の姿…」



大地のオーラが終結し巨石に宿った異端なる生命体――"斎天大聖孫悟空"




「ははッ、それが貴様の真の姿か!やはり化け物は貴様らの様だな!!…なっ!」


笑っていた六道が、一瞬のうちに頭を地面に強く押さえつけられる。あっという間に六道の目の前に移動した悟空が、彼に股がりニィッと笑った。



その表情に恐怖した六道は咄嗟に悟空の腹を蹴り飛ばす。しかし即座に向かってくる相手に、札を投げる…が。




―――バシュ…バシュ


「何ィ…!?札を焼き切る程の妖力を放っていると…!」



―――バキィ

「がッ…!!」


殴り倒した六道に再び股がり、無抵抗にも関わらず殴り続ける悟空。あまりの変わりように悟浄は茫然とする。




「感心してる場合じゃないですよ」

「八戒」

「…まだ息があるんです!雨に体温を奪われてる、出血だけでも止めなきゃ…!!」


気功で傷口を塞ぐ八戒を横目に、ハルは狂ったように殴り続ける悟空を見やった。



「三蔵は僕が何とかします、三人は悟空を止めてください」

「ああ…だけどどーすりゃいいんだよ!?」

「僕だってしりません。三蔵でないと…でも、今の悟空は明らかに正気を失っている……このままじゃ、あまりに強大な己が妖力を抑えきれずに全てを破壊するまで暴走を続けてしまう!!」



――ベリッ

「うぎゃああぁあああ!!」

「『!!?』」


悟空が六道の肩を食いちぎる。しかし再び数珠が光を発し、悟空を怯ませた。その間に六道は術で姿を消す。



「逃げやがった…!?」

「逃げはせん!覚えていろ、必ずや戻ってくる。その時は貴様らを、貴様ら妖怪全てを呪符な肥やしにしてくれるわ…!!」




六道が消え、八戒が三蔵の傷口を塞ぐことができた今、残された問題は悟空だけだった。


「悟空!おい…大丈夫か?ご…!!」

近づく悟浄に迷いなく振られた腕。なんとか交わしたが、今の悟空には判別能力がない様子。



「ハル!!」

『…うん!』


地を蹴る双子。ハルは扇を手に出すとバッと広げ大きく振った。巻きおこる風によって悟空が吹き飛ばされる。



「……ッ…」

「おまえなァ!」

『あ、ごめん』


同じく吹き飛ばされる悟浄に軽く謝るハルに続いて、リクが青く光る手を地に付けると辺りに冷気が漂う。



―――ズザザァ


「……ッ」

地に着地した悟空を確認すると、さらに力を込める。



―――ピキピキッ…


「地面が…!?」



雨によって濡れた地面はリクの魔力によって一瞬で凍る。地に足を付けていた悟空はそれにはまり、膝まで凍ってしまっていた。


「とりあえず動きは止めたけど…」

『どーすれば…』

「そのまま動きを止めておけ!!」

「「「『!?』」」」



一行に聞こえた謎の声。次の瞬間には悟空の頭上に降りてきた輪が額に妖力制御装置を作り出した。


倒れる悟空をリクが受け止めるが、ただ眠っているだけ。




『……何?』

「今のは一体…?」


「ったく、だらしないね〜」




背後から聞こえる先ほどと同じ声色。



「…よォ」


振り向くと額に印(チャクラ)を持った黒髪の女性が笑っていた。








 

mae ato
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