02

 




―――ザァアアァ


雨は降り続ける。



『……リク…』

「まだ、寝てねェよ…」

『先に寝ないでよ?』

「……はいはい」


それぞれのベッドに横になる双子。普段ならあっという間に寝入るはずのハルがまだ起きている。



『………この雨、氷に変えてよ』

「どんだけ魔力使わせる気だ」


布団に潜るハルは軽く笑った。



「ほんと…早く止めばいいのに」

リクがぽつりと呟いた瞬間














「きゃああああ!!」


―――パリン…ガシャン



「『……っ…』」


瞬時に跳ね起き部屋から飛び出す二人は、別部屋だった三蔵たちと合流する。



「た…助けてェ!!」

「どうした!?」

「調理場に…妖怪が…!!」


宿屋の女は泣きながら悟浄に抱きつき助けを乞う。



















―――ばんっ


調理場の扉を開けば気味の悪い音と、すでに死んだ人間の内臓を喰らう妖怪の姿。



「クソッ…調理場はなァ、モノ食う所じゃねェんだよ!!」

悟浄が妖怪を蹴りとばす。が、背後にも現れた妖怪。


「悟浄、後ろにも…!!」



「おらァ!!」


―――ドサァ



倒れこむ妖怪。勢いよく妖怪を殴ったのは珍しく寝起きのいい悟空で、それを悟浄がからかう。


「たまにわねッ。さてと、コイツらどーす…」




―――ヒュッ


「ロ奄(オン)」

「ぎゃあぁあああ!!」



悟空の言葉を遮り飛んできたのは呪符で、妖怪たちに貼り付いたそれは異様な音をたてて妖怪を苦しめる。

「な…何だァ!?」


バタバタと倒れる妖怪たちを見下ろす彼らの耳に聞こえてくるのは、錫杖が揺れる音と真言(タントラ)。



「ダマカラシャダソワタヤ…ウンタラタカンマン……」

「……っ…」

『………』


三蔵の表情が強張るのをハルは見逃さない。



「…我が名は六道。この世の妖怪は一匹残らず俺が滅する。」

首には珠の大きな数珠をかけ、手には錫杖と数枚の札、笠の下から見えるのは鋭い瞳。



「こいつがあの、六道…!」

「…どこが大男」


ぼそっと呟くリクに八戒が苦笑する。



「あ…ありがとうございます、六道様!!」

「礼などいらん。これは俺の使命だ」


三蔵の紫の瞳は"六道"と名乗る男から離れない。



「よくわかんないけど、片付けてくれてラッキーってカンジ?」

「なーんだ、寝よ寝よ」


ぞろぞろと自室へ戻ろうとする一行。それに気づいた六道が錫杖を振り上げた。



「おい」


―――シャン…



「…何」


悟浄の肩すれすれに止まる六道の錫杖。めんどくさそうに振り向く悟浄たちに彼は一言尋ねた。




「貴様ら人間か?」

「また随分と不躾な質問ですね」

「俺の目はごまかせんぞ。貴様ら三人とも妖怪だな」


ハッキリと言い切る相手にカッとなるのはやっぱり悟空で、前に立つ八戒を押し退け訴える。



「だったらどうだってゆーんだよッ!!俺達は…」

「悟空」

「言っただろうが…全ての妖怪を俺が滅すると…!!」


勝手に敵意を持つ六道に戸惑う悟空。悟浄が慌てて声をかけるも一足遅い。



「ロ奄!」




――ビッ……パンッ


六道の投げた札は悟空に当たることなく弾け飛んだ。




「何!?」

「何勝手にやる気になってんの?」


辺りには冷気が漂っており、よく見れば床にはバラバラになった先ほどの札の欠片。どうやら一瞬にして凍らせた札が、冷気に耐えきれず、崩れてしまったようだ。









 

mae ato
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