02

 




―――ガシャ…ガシャン


「何てことするの!…!?」

「てめぇっっ!やっちゃイケねェことやったな!!?絶対許さねェッ!!」

『あたしの春巻…っ、よくも!!』

「覚悟出来てんだろうなァ?」

あっという間に乱闘を始める猿と河童と双子。女店員は目をまるくしてその光景を眺める。


「妖怪どころか人間とまで争ってどーする」

「血気盛んですねェ」

二人が呆れる間にもあちこちで破壊音と男たちのうめき声が響いていた。




「飛(フエイ)さんやめとくれよ!店がボロボロになっちまうっ」

「るせえ!!」

見かねて飛び出してきたのは店主だが、飛と呼ばれる酔っぱらいはそれでも止まらない。


「勝負をつけたきゃいつものヤツにすればいいじゃないか!な?」

「いつもの勝負ぅ?」

『何それ』



酔っぱらいはニヤリと笑うと酒瓶を机にドンッと置いた。

「酒場の男の勝負といやあ、決まってんじゃねーか……飲み比べよ」


あからさまにイヤな顔をする一行に酔っぱらいは鼻を鳴らすと、嫌味な言い方で彼らを挑発する。


「ま、最初(ハナ)っから勝負にゃなんねェか!そっちにいるのはガキ3人と、見るからに貧弱な坊主だもんなあ」

「………」


たったその一言が彼の逆鱗に触れたのだった。



「…店主」

「は?」


三蔵の手には三仏神名義のクレジットカード。

「…この店中の酒、一滴残らず持ってこい」

「は…ハイッ!!」




「…飲む前から目が座ってますけど〜?」

「わーい、酒だ酒だーv」

『初めて飲む!』

「……あんま飲みすぎんなよ?」


こうして酔っぱらいの提案により、6対6で先に全滅した方が負けという飲み比べが始まった。








――そして…

























「…口だけじゃねーようだな」


相手はもう飛しか残っていない。一行は顔は赤くなっているものの、なんとか頭を上げていた。

「こんくらい何だよ、こっちゃまだまだ余裕だぜェ…なあ悟く…」

「……ぐー。」

「起 き ろ !このサル〜!!」


すでに寝入っている悟空の頭を三蔵が机に押し付けるが、酔っぱらった悟空は目を覚まさない。


「そのガキはリタイアの様だな」

「そっちこそてめェ以外全滅じゃねェか」

「残念だな、俺はこの辺じゃ飲み比べで負けたこたァねーんだよ」




しかし





「じゃあ、どーせだからもう少し強いお酒下さーい」


と笑顔で手をあげる八戒に、自慢気だった飛は唖然とする。



「…そーいえば俺、八戒が酔ったところ見たことナッシング」

「あなどれねー」

「で、随分静かだなァ」

「……確かにな」


八戒の酒豪っぷりに驚く三蔵と悟浄は、間に座る双子を見下ろした。かくんと頭をさげるハルとゴクゴクと酒を飲み続けるリク。呼んでも返事のない隣に座るハルを三蔵が軽く揺すってみる。



「ハルちゃん、激弱だなァ」


悟浄はげらげらと笑いながらリクの頭をぽんぽんと撫でた。




「おい…」

『…………』

「……起きろ」


『………さん、ぞ…?』


ぽつりと名前を呟いたかと思うと……








 

mae ato
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