01

 





「飯、飯!!」

『あたしもお腹すいたぁ』

「早く頼もうぜ…」

「はいはい、どれにします?」


酒場に着いた一行はテーブルを囲み今まさにメニューを開いていた。タバコをくわえる悟浄がちらっと店の奥に目をやると、それに気づいたハルが身を乗り出してのぞきこむ。



『何見てんのー?』

「下手くそなおっさんだよなァ」

『……あの人…』

「あ?どうした」


二人の視線の先には酔っぱらいに絡まれる女店員の姿。ハルは蘇芳の瞳でじっと女店員を見つめる。



「あの姉ちゃんがどうした?」

ハルの頭をポンポンとする悟浄をリクが威嚇するなか、かくんと首をかしげ『……なんでもない。』と呟いた。


『とりあえずあの酔っぱらい…』

「だな。」


リクは手元にあった灰皿を掴むと迷うことなく酔っぱらい目掛けて投げる。見事額に命中したそれに双子はハイタッチを交わし、何食わぬ顔してメニューをのぞいた。
















「お姉さん、オーダーよろしく!!」

「は、はい!」


悟空が呼ぶと先ほどの女店員はハッと我に返ったかのように駆けてきた。

いつものように大量の注文をする悟空に便乗し、双子も勝手に横から注文をいれる。ところどころ三蔵に訂正されるが6人にしては相当な量だ。


「以上でよろしいですか?」

にこぉと悪意のない笑顔を向ける店員に悟浄が思い出したかのように声をあげた。


「灰皿ひとつ」

「え……、か…かしこまりました」

一瞬きょとんとした店員だったが、返事をするとそそくさと奥へ行ってしまう。


















「…どう思う?」

「どうって?」

三蔵の言葉に悟浄が問う。


「俺達が長安を発って今日で一月になる。倒した妖怪は星の数。そのほとんどが"紅孩児"が送り込んだ刺客だ…。その"紅孩児"が牛魔王の息子なのはわかる………、しかし」


悩ましげに腕を組む三蔵をハルはきょとんと見上げる。

「本来は誰の指示にも従わないはずの妖怪達が自害にいたるまでの忠誠を誓うとはな…」


「ここしばらく静かだったからな。そろそろ又何かしらの攻撃をしかけてくるだろう」

「『………』」

「…結局僕らはまだ何も知らないんですよね。牛魔王蘇生実験の目的も、それを操るのが何者なのかも…、そして……」



八戒の視線は隣に座る双子へと移る。やはりハルはその視線に目をまるくして応えるが、リクはそっと目を伏せた。






<貴様ら術者は、必ず我らの手に…>







「あのー、御注文の品ですぅ」

「『わーいv』」

深刻な話をしていたはずの空気が悟空とハルによって崩された。そんな二人の姿に一行はほっと息を吐くと、自然に笑顔となる。


「『いっただっきまーす!!』」






「…きゃあッ!?」

「あ?」

『…?』


口にする直前に聞こえた悲鳴に悟空とハルは手を止める。すると女店員がさっきの酔っぱらいに再び絡まれていたのだった。




「また貴方達…放して!」

「…あーあ、オッサン下手だよ。女の扱い方がさ」

「何だと若僧がァ!すっこんでろ!!」

悟浄がにっと笑いながら酔っぱらいに声をかける。リクは顔を赤くして女店員にすがりつく男に眉をしかめながら言った。


「また灰皿当てるよ?…さっきのうまかったっしょ?」

「!!〜〜てめぇか、さっきのは!?」


イラっときた男は一行のテーブルを足蹴に全ての料理を溢した。










 

mae ato
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -