02

 





『あたしたちはもとの世界に帰るしかないんだ』

一行の背中にぶつかる声。いつになく冷静な#なつめ#の声色に驚きを隠せない四人。


「どうゆうことだ…」

誰もが茫然とするなか唯一声を発したのは、じっと真っ直ぐ視線を向ける三蔵だった。


「……っ、…俺たち双子は本来この世界にいないはずの存在…」

『あたしたちがこの世界にいることで、小さなずれが生じて…、それは三蔵たちの運命も変えていくの。』



静かに話す双子に四人は黙って耳をかたむける。


『あたしたちは自力で帰れるほどの魔力なんて持ってない…。でも…みんなの運命を変えたりなんかしたくない、…だからっ』

「…チッ…、だからなんだってんだ。」

『……っ…!!この間にもみんなの運命が…っ』

「馬鹿か、てめぇら…」


ハルの言葉を三蔵が呆れたような声でさえぎった。うつむく少女の頭をぶっきらぼうにがしがしと撫でる。




「もともと運命だったんじゃねぇの?」

タバコを片手にふぅーっと息をつく悟浄がへらっと笑うと、にこっと微笑む八戒が続けた。

「そうですね、少なくとも今の僕には二人がいない旅なんて考えられないですから」


「悟浄…八戒…」

「俺だって…っ!!」


声をあげる悟空は金色の瞳を真っ直ぐに双子へと向ける。



「運命とかなんだよ!おまえらと一緒にいれねェなら運命とかどーでもいい!!だから帰るとか…、避けたりすんなよ…!いつものバカみたいに笑う二人にもどれよ…っ」

「……悟空」


一度ゆっくりと目を伏せたリクは小さく息をつくと、ふっと笑った。ハルはそんな片割れをきょとんと見上げる。




「…バカみたいってなんだよ。馬鹿猿」

「リク!」


金色の瞳を大きく開いて嬉しそうに名前を呼ぶ悟空。じゃれあう二人の頭をぐしゃぐしゃと撫でる悟浄も嬉しそうに笑っていた。


『…………』

「おまえは…まだ納得行かねぇのか…」

『納得、とかそういうのじゃない…』

徐々にうつむくハルに声をかける三蔵を八戒は少し離れたところから見守る。



『……怖いんだ…っ』

「…ハル」

二人の様子に気がついたリクはぐっと小さな拳を握る妹を見つめた。




『みんなを信じて…、"あの時"みたいにまた…っ、信じた人に…裏切られるのが……、…怖いんだ……っ』


顔をあげるハルの表情に三蔵はわずかに目を見開いた。少女がぽろぽろと大粒の涙を溢していたから。強がりな彼女が兄であるリク以外には見せたことのない涙。





『……けど…っ』







ハルは涙をぬぐうことなく訴える。




『みんなと…、……一緒にいられなくなる方がイヤだ…っ!』

嗚咽を堪えながら何とか告げる少女。


『あたしが邪魔になったら…裏切ってもいい!!…一緒に…っ、いたい』













「………バーカ」








 

mae ato
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