01

 




『……くしゅんっ…』



バチバチと燃える火の前で毛布を身体に巻き付け丸くなるハルに八戒が近づいた。


「もう一枚どうぞ。」

『あ…ありがと…』

にっこりと微笑む八戒に戸惑いながらも、毛布を受け取る。



普段ならハルのとなりには必ずと言っていいほどリクの姿があったのだが、今その片割れはいない。





「さっみー!」

「もとはといえばおめぇがぎゃあぎゃあ騒ぐから、こーなったんだろうがッ!!」

「ちげーよ!ハルとリクが落ちてくるからだろッ!!」

「だからその引き金はおまえだろうが!」


火を囲むハルと八戒、悟浄、悟空、そして三蔵。リクは少し離れたところで胡座をかき、肩肘をついている。




『……、…あたしちょっと顔洗ってくる。寒いなら火に当たれば?』


片割れをじっと見つめた後、ハルは唇を尖らせながら立ち上がる。

「……おい」

『………』


何も言わずその場を去るハルに誰もが唖然としていた。ただ1人、重度のシスコンのリクだけが肩を落としてうなだれている。




「……何コレ?」

「何って…兄妹喧嘩だろ?」

「あの二人がですか?」

「仲良しこよしのあの二人がな…」

「おまえらな…」


掛け合いをする四人を見て、さらに頭を抱えるリクに、悟空は黙って近づくと彼の腕を引っ張り火の側へ連れていく。




「お…おい」

「……なんで言ってくんねェの?」

「………」

静かに呟く悟空。一瞬動きを止めたリクだが、それは本当に一瞬ですぐさまその手を振りほどいた。


「だから言ってんだろ?……おまえらに言ってもどうにもなんねぇって…」

「…また叩かれたいんですか?」

「…ハルがいねぇから言ってんだよ」




――バチッ



「……っ…」





頬に走る痛み。それが叩かれたものだと気づいたリクは、戸惑いながら目の前の彼を見上げる。



「僕も手が出ちゃうタイプなんですよねv」

にこりと微笑む八戒に、リクは驚きの表情を隠せずに見つめた。

「耳はよくても頭は悪いのなァ〜」

「見た目通りだな…」

平然と言ってのける悟浄と三蔵。ムッとしたリクが口を開こうとすれば、今まで黙っていた悟空の声がそれを遮る。




「理由…教えろよ」

「……何の…」

「おまえらが変わっちまった理由だよ!!」

声を張り上げる悟空だが、リクは動揺もなくただじっと悟空を見据えた。



「……ずっと一緒にいたのに…、なんで…なんでいきなり変わっちまったんだよ!?俺らのこと避けんなよ!!」


真っ直ぐな言葉をぶつけられ、リクの蘇芳の瞳がわずかに揺らいだ。







 

mae ato
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