01

 





――ザワザワ


「――このアマ!あやまれっつってんだよ!」

「嫌よ!ワザとぶつかって来たクセにッ」


小さな町、茄陳(コーチン)の町の道の真ん中で若い女と数人の男が昼間から争っていた。男たちは女を囲みニヤニヤと笑いながら脅すが女も気が強くただでは屈しない。



「いい加減に…ッ」


――ガンッ



女が声を上げた途端一人の男の顔が地面にめり込んだ。きょとんとする女の耳に今までなかった男の声が聞こえる。


「ンだ、ガキかよ…」

『そんなこと言うなよぉ、可愛いじゃん』

「ンなことより…おい、このへん宿屋ねぇ?」



男の頭を足蹴にする悟浄の横からひょこっと顔を出す瓜二つの双子。こんな状況にも関わらず自らが訊きたいことを問うマイペースなリクに思わず女は「…は?」と口にする。


「ンだてめェら!?邪魔しようってンなら……」

青筋をたてた男はナイフを取り出すとそれを彼らに向ける。



しかし



――ゴッ


「ぶ」


いち早く飛び出した悟空によってすぐさま殴り飛ばされる。



「ビンゴv」


――キッ……ドッドッドッ…



「おい、おまえらあんまり派手な行動をとるなっつっただろ!?」

「僕らも充分目立ってますよ」


遅れて現れた三蔵と八戒はこの辺りで珍しいジープに乗っているため人のことは言えない。驚きからか座り込む女にすっと手が差しのべられる。


『立てる?』

「あ……」

見上げるとハルがにっと笑いながら手を差し出していて女は素直にそれに掴まる。リクはそばに落ちていた彼女のものらしい野菜を拾うと手渡した。



「俺ら旅してんだけど宿屋探してンだ」

「メシのうまい宿屋教えてよ」

「駐車場完備だと嬉しいんですが」

リクの後ろから顔を出す悟空や八戒の笑顔に平常心を取り戻せた女は小さな声で答える。



「そっ…それならウチが……」


「よっしゃ!三蔵、宿屋見つけたー」


喜びを露に駆けていく双子に女はクスッと笑みをこぼした。






 

mae ato
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