『言えないよ……"イジメられてる"なんて言えない』


過去を思い出すように胸を押さえるなつめ。



『何とか隠そうとして…もしお母さんに知られて……"イジメられてる"自分が嫌われたりしたらどうしようって……そんなこと考えたら怖くて…大丈夫だよっ…て言われたら安心出来るのに……って』






<ごめんなさい…なつめ>







『さっちゃんは…あたしの過去も知ってるし……尚更言えないよ』

「……なつめちゃん」


呼ばれて顔をあげるとなつめはにこっと優しく微笑む。



『さっちゃんも…同じ気持ちなのかも……嫌われたくなかったんだよ。…おばさんのこと、お母さんのことが大好きだから言えなかったんだよ!』

なつめの言葉に涙を溢れさせる杞紗の母親。




―――ポンッ


元に戻った杞紗も涙をぽろぽろと流しながらなつめに抱きついた。



『さっちゃん…久しぶりっ』


なつめの頬にも温かい涙が一筋こぼれ落ちていた。

























「居候?杞紗が?」

「今日色々ありまして暫く預かる事にしたんだよ」

事情を聞いた夾が「杞紗は?」と訊ねると何故か嬉しそうな紫呉。


「もうなつめちゃんにベッタリv」

「やっぱりなつめはすごいよね…」

そう呟く撥春の横を夾は黙って通りすぎていった。























「…寝ちゃった?」



『みたいだねぇ』


なつめの部屋ではなつめの膝に頭を乗せた杞紗がすやすやと眠っていた。


「なんか全然離れようとしなかったね…重くない?」

彼女の隣で杞紗を眺める由希に『大丈夫だよ』と答える。




「…………いいな…杞紗」

羨ましそうに杞紗を見詰める由希に気づいたなつめはきょとんと彼を見る。


『ゆんちゃんも甘えん坊?』

「……"も"って何?」

『いや…さっちゃんと同じでって意味……』

本当は夾と同じでと答えようとしたなつめだが、それは後のことを考えて飲み込んだ。



「…そうかも」

呟くと同時になつめの方に頭を預ける由希に、彼女はにこっと微笑むだけ。









弱い自分が恥ずかしくて


でも



言ってほしい


一度でいい




ウソでもいいから



それはきっと"強くなりたい"と願う

勇気になる





『大丈夫だよ…』


「………なつめには敵わないよ…ほんと。」

『…?』







 


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