『お母さん、おはよー』

「……おはよう」

『…………』



・・・
あの日から母親は変わってしまった。


笑顔を見せなくなり無表情か辛そうに顔を歪めるだけ。父親に理由を訊ねても「調子が悪いだけだよ」と笑顔で流される。

『お母さん?』


彼女を蒼い綺麗な瞳で見詰めるがその瞳はなつめを映さない。



「なつめ…」

『……お父さん』

彼女の名前を呼んだのは父親で、なつめは黙って椅子に座る。出されていた牛乳に口をつけながらも蒼い瞳は母親を求める。




「なつめ…」

『っ…はい!』

母親の声に嬉しそうに立ち上がるなつめはちょこちょこと駆け寄る。

『なあに?お母さん』






「学校……行くの?」

『え…なに言ってるの?……行くよ?』


戸惑いながらも答えるなつめにやっと瞳を彼女に向ける。その瞳は哀しみに帯びていた。



「どうして…あなたが……呪われて…」

『…お母さん?』

ぶつぶつと呟き始めた母親を不思議そうに見詰めるが、彼女はそんなこと気づいてもいない。


「ごめんね…なつめ……」

『お母さん!ねぇっお母さん!!』

「お母さんがいけないの……お母さんが…」

『おかあ…さん……』




泣きじゃくりながら母親を求める彼女は後ろから温かい腕に包まれる。


『おと……さん…?』

父親はぎゅっと彼女を抱く。




「……ごめんなさい…」


『………っ!?おかあさっ…』



母親の行動に大きな瞳をさらに見開くなつめだが、すぐに視界が揺れる。父親によって制されたためだ。





―――カランカラン



金属音がしたかと思うと父親は慌てて電話を手にする。




「……は、はとり君か!?お父さんはいるかい!?至急うちへ!!」


なつめはそんな父親の元へ行こうと振り返る。


『おとう…さ………え?』




そこにはお腹から血を流す大好きな母親の姿があった。


『おかあ…さ……』

ピクリとも動かず倒れたままの大好きな母親。








『イヤ…だ………イヤ…ワアァアアァ!!!』







 


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