『何言ってんの?しーちゃん』
目を見開く彼女にぐっと顔を近づけるとにっこり笑ってみせる。
「なつめちゃんは若い人が好みかな〜って」
『なんで?』
きょとんとするなつめにここぞとばかり詰め寄るのは、紫呉ではなくもう一人の27歳。
「大丈夫さっ、なつめ!君がどんなに若者好きだろうが、ボクは童顔だから若者に見えるだろうっ!いや、27歳だって立派な若者さっ!!」
一人暴走を始めた綾女を押し戻しながら苦笑する。
『あたしは別に若者好きじゃないよ?』
「「……え?」」
次に反応を示したのは若者たち……由希と夾だった。
『だってあたしハリィもあーやもしーちゃんも好きだもん』
目を細めて微笑むなつめに紫呉も綾女も胸を射ぬかれる。
『もちろんゆんちゃんも夾ちゃんも…透君も好きだよぉ。』
透と向き合ってほのぼのと笑いあう二人に天国から地上に落とされた四人。
「やっぱりなつめの好きは…」
「そっちの好きかよ…」
「…まあ僕らは構わないよ。」
「なつめに好きだと言われたらそれだけがボクの力になる」
綾女の言葉に疑問を持つ由希と夾だが、その隣では安心したように微笑む紫呉がいた。
それから綾女の高校生時代の話になり、"長髪を許された理由"や"生徒会長"として"解決した(?)事件"などペラペラ話すがいっこうに二人の溝が埋まることはなかった。
『あーや…』
「なんだい?ボクに興味を持ってくれたかい?ならば理事長事件の話をしようか」
『…焦ってる?』
じっと見詰めるなつめの蒼い瞳に、錠をかけられたかのように逸らせなくなる。
「焦ってなどないさっ…何を言って…」
『焦らなくて大丈夫だよ…大丈夫』
なつめの言葉に心臓がきゅっとなる。ふわりと微笑む彼女に心臓が包み込まれるように温かい。
「君は…ほんとに…」
小さく呟いた綾女の表情は少しはにかんだ嬉しそうな笑顔だった。
「紫呉っこいつをなんとかしろ!」
「え?なんで?楽しいのに」
「そうそう楽しいさっ」
「こっちは苦痛なんだよっ!!」
遂にぎゃあぎゃあと文句を言い始めた夾に紫呉は困ったように頭を掻く。
「うーん…でも基本的には僕の言う事もきかないしねぇ…唯一きくとすれば…」
「おい」
声のする方を向くとそこには何故か…いつの間にかはとりが立っていた。
「鍵が開いていたから勝手に邪魔したぞ。」
『ハリィ…!?』
「はとりさん!?」
「おやまぁ」
「とりさんっどうしたんだい!?突然」
全員がいきなりの訪問に驚くなか、何故か夾ははとりの長髪に驚いていた。
「…撥春が綾女を連れて帰れと」
はとりの言葉にはっとする透。ため息をつくはとりは由希から視線を綾女へと移す。
「…今日はここら辺にして帰ったらどうだ、綾女」
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