「で…何故おまえはここにいるんだ」
『……慊人に会いに行って…』
「追い返された……と」
『う〜…ハリィ!ι』
2月14日――朝早く家を出たなつめは本家へと来ていた。先ほど慊人の部屋を訪れたのだが…
『慊人〜』
「……久しぶりだね…なつめ。」
慊人の言葉に『前に会ったのは…』と話し出すなつめに彼は当たり前のように怒鳴る。
「どうして正月帰って来なかった…っ!?」
『……どうせ宴会には出れないじゃん。』
かっと来た慊人はなつめの肩を持つと、勢いよく壁へと押し付ける。
「僕に会うために帰ってくるんだろ…っ?」
驚いたなつめは肩と背中に走る痛みに顔を歪めた。
『…あき…と…っ』
「………っ…」
なつめの痛みに歪む表情を見た慊人は肩から手を放すとふいっとそっぽを向く。
『慊…』
「…帰れよ」
なつめの呼ぶ声を遮るかのように彼は視線を落としたまま告げる。動こうとしない彼女に今度は声を大きくして怒鳴った。
「…っ帰れ!なつめは僕より本田透の方がいいんだろっ!!」
『慊人!!』
「帰れよ!!」
『…………わかった』
言い争いを始めるかと思いきやなつめは、寂しそうに俯き呟くとそっと部屋を出ていった。
「なつめ…」
彼女の出ていった襖をじっと見つめる慊人が、どんなに寂しそうな表情だったかなんてなつめは知らない。
『あたし…慊人の気持ちなんて考えてなかったぁ……ハリィ〜!慊人、いつになったら許してくれるかなぁ?』
はとりの家のソファーにでろーんと伸びるなつめは、1人目に涙を溜めながら呟く。
「……どうだろうな」
『慰めてよぉ!』
どうでもよさそうなはとりにガバッと起き上がり抗議すると、ようやくちらりとなつめを見た。
「…男の家でそんな格好でごろごろするんじゃない。」
そんな格好とは上は寒いため何枚も羽織っているのだが、下はというと季節に合わないミニスカートを履いていたのだった。
『男って言ってもハ……わっ!?』
ぶつぶつ文句を言おうとしたなつめを何かが押し倒した。何かとはもちろんはとりしかいない。
『ちょっ…ハリィ?』
「…俺だから何もしないとでも?」
じっと見下ろすはとりの目は他人を見るような冷たい瞳ではなく、なつめを見るとき特有の温かい瞳で…
『……ハリィは何もしないよ…』
「……どうかな。」
はとりは妖しく笑った後なつめの首もとに自らの顔をうずめた。
『ちょっ…まじ!?ι』
さすがに焦ったなつめの声にかぶって聞こえてきたのは、神からの助けだった。
――ピーンポーン
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