「よく寝てる…軽めの発作で済んだみたい」
紫呉の言葉にほっと息をつく透に彼は学校に戻っていいよと微笑みながら告げる。
「いいえ!私…付き添いますっ」
慌てたように答えた透に便乗するようになつめが続ける。
『こんなゆんちゃんほっとけないし…ねっ!透君』
「そうです!それにカゼは怖いんです…バカにしてはいけないです…っ」
寂しそうな表情をする透を不思議に思いながらもなつめは、はとりに電話すると言って部屋を出ていこうとする。
―――ポンッ
「…俺も行く。」
「きゃあ…っ///」
元に戻った撥春はもちろん全裸で透の心臓は一気にとびはねる。
「電話どこだっけ?」
「すっ裸で歩くなっ!」
『…夾ちゃん、服貸したげなよ。』
3人が部屋を出ていくと紫呉は学校に荷物を代わりに取りに行ってくると家を出た。…もちろん下心丸出しで。
「――プルルル…はい」
『あ、ハリィ?』
「………学校はどうした」
『えと…しーちゃん家来て!』
はとりの疑問にも答えず単刀直入に告げるなつめに、電話の向こうの彼は短く「…は?」ともらす。撥春はなつめの持つ受話器を取り代わりに話し出す。
「バカだろ…ちゃんと話さねぇとわかんねぇよ。」
『だってなんかいろいろ怒られそうだったから…ι』
壁に座りこむ夾の隣に並んでしゃがむなつめ。
『ハリィ今機嫌悪いみたい…』
ぽつりとなつめが呟くと同時にガチャと受話器を置く音が聞こえた。
「なんだって?はとり」
「なんでか俺が怒られた。」
「三日も行方眩ましてりゃな。」
さもあり得ないと言うように二人を見る撥春に夾が冷静に突っ込む。
それからそんな二人を置いて水枕を取りに台所に来たなつめ。
『……カゼは怖い、か…』
「どうなさいました?」
なつめの呟きにいつの間にか台所に居た透が首をかしげて聞き返す。
『Σと…透君!びっくりした』
なつめが笑い返すと透もクスクスと笑ってみせる。
「…由希と夾、毎日殴り合いしてるのか?」
なつめを追って透と共に台所へやってきていた撥春の問う。「していませんよ?」と不思議そうに透が答えると、少し驚いたように目を開く撥春。
『随分仲良くなったでしょ?』
なつめが嬉しそうに撥春をのぞきこむと微笑みながら頭を撫でる。
「てっきり毎日血みどろのケンカしてると思ってたけど……そうか…意外だな」
すっとなつめの目を見つめるが彼女はきょとんと見かえすだけ。
「@@なつめのせいだろうな…」
『……え?』
「なつめが側にいるからだろうな」
撥春の言葉に透はにこっと微笑み、なつめは『まっさかぁ』とけらけら笑いながら台所を出ていった。そんな彼女を見送りながら撥春は愛おしそうに微笑む。
「なつめが帰ってきてくれてよかった…」
透と撥春は水枕を手に由希の部屋へと向かう。
「撥春さんもなつめさんが大切なのですね。」
「………うん」
何かを思い出したのか優しく微笑みながら頷く撥春。
「でも由希も大事、俺の初恋は由希だから。」
――ガッション
撥春の言葉の続きに驚いた透が水枕を落としたのは言うまでもない。
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