『……呪いの話をしてた。』


暫くして口を開いたのなつめで先ほど透が口にしていたことをはとりに話した。



『……彼女に何を話したの?』

威嚇するようにはとりを見上げるなつめに彼は眉ひとつ動かさず答える。


「草摩に関わらないほうが良いと教えてやっただけだ。」



彼の答えになつめははとりの白衣を勢いよく掴んだ。


『透君はそこらのやつらとは違う!あたしが化け物だってしっても笑顔で受け止めてくれたんだ!!慊人からはあたしがちゃんと守るからっ…だから……』



ずるずると座り込むなつめに合わせるように、はとりも一緒にしゃがむ。そして知らず知らずのうちに流れていたのだろう彼女の涙を拭った。


『……あたしからあの子を遠ざけないで…』

お願いと懇願するなつめの頭に手を置くとはとりは小さなため息をつく。






「…何も俺はなつめから彼女を遠ざけようなんて思っちゃいない。」


潤んだ瞳ではとりを見上げるなつめに続きを答えたのはそばに立っている紅葉だった。



「ハリィもトールを守ろうとしてるんだよ。」


いつもより落ち着いた紅葉の声はすーっとなつめの胸に染み渡り、以前はとりといつも一緒にいた彼女を思い出す。




『……慊人は透君を…利用してるの?』


落ち着きを取り戻したなつめははとりの胸に頭を預けたまま小さな声で問う。



「……そうだとしたら?」

『Σ…うわっ質問返し!?』


先ほどまで泣きじゃくりながら懇願していた少女とは思えないほどキャラが変わった彼女に紅葉は「元に戻った〜」と嬉しそうに跳び跳ねる。





『慊人のお遊びに…透君は使わせないよ』

にやっと笑う彼女はもうすっかりいつもの彼女ではとりは静かに微笑んだ。



「やりたいようにやればいい…俺は誰の味方にもならない、もちろんなつめの味方にも…」


その言葉にむっと眉を寄せるなつめに普段は見せない穏やかな笑みを浮かべるはとりは彼女の頭をくしゃっと撫でる。






「けど…敵にもまわらない。」


続く言葉に思わず口元を緩めるなつめ。




『はりぃは優しいから…いつも痛い目見るんだよ。』


「そうかもしれないな」と苦笑して答えるはとりに『でもね…』と続けるなつめ。





『そんなはりぃだから好きだよ。』



頭をあげたなつめの表情はにっとはにかんだ笑みを浮かべていてはとりも困ったように笑ってみせる。


「なら俺はずっとこのままでいるしかないな。」

そう呟くはとりの後ろから抱き着くのはもちろん可愛らしい笑顔の紅葉。



「ハリィがなつめの味方にはならなくても僕がなつめの味方になってあげる〜!!」


紅葉の輝く笑顔になつめもつられて笑ってしまう。

『ありがとー、紅葉。』


はにかむ彼女の手をとると紅葉は真剣な表情で問いかけた。






「僕のことは好き?」


『ふふっ…好きだよ〜!』



あまりに真面目な表情で聞く紅葉になつめはけらけらと笑いながら答えた。それに満足した紅葉もつられるように微笑み、その場の空気はふわりと温かいものとなった。








唯一の温もり







 


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