『透君はー?』
あくびをしながら居間に入ってきたのはパジャマ姿のなつめだった。
「おはようなつめちゃん…昨日の夕飯のとき言ってたじゃない、お友達の家に行ってきますって」
『そっかー』と再びあくびをするなつめに紫呉は困ったように笑うと「とりあえず着替えなさい」となつめの背中を押し返す。
『え、どーして?』
背後に立つ紫呉をぐっと見上げるように見るなつめにさすがの紫呉もすっと目をそらした。
「由希君と夾君が朝からもえもえしちゃうからねー(…僕もだけどι)」
「しっ…紫呉!///」
「勝手なこと言ってんじゃねぇ!!///」
慌てる二人に『もえもえ?』と疑問符を抱くなつめは仕方なく普段着に着替えた。
暫くすると紫呉が「ちょっと出かけてくるね〜」とぶらぶら出ていく。
『んー…』
「……………」
「……………」
『んー……』
「…………………」
「…………………」
『んー…』
「うっせぇ!何なんだよ、さっきから!!」
なつめの唸り声にしびれを切らした夾はうがーっと声をあげる。
「どうしたの?なつめ」
由希も少し苦笑しながらの対応で@@なつめはやっと自分がうるさかったことに気づいた。
『うわっごめん!ちょっと考え事してて…』
その言葉に二人は「なつめが考え事!?」と声を揃える。どうして普段口喧嘩ばかりの二人が息が合うのか不思議だ。
『ちぇっ、二人して!』
拗ねたように舌打ちをするなつめ。
「ごめんごめん…ι…で、何を考えてたの」
由希の問いに少し考えるそぶりをみせると「よしっ」と言って立ち上がる。
『もう決まった!ちょっと出かけてくるね』
ばたばたと家を出ていく彼女に残された二人は「何だったんだ…」と口に出さずとも同じことを考えていた。
『……来ちゃった』
あまり来たくはない場所ではあるが気になって仕方がなかったなつめは本家に来ていた。そこで聞こえたのはもう聞きなれたあの優しい声。
「紫呉…さん」
『…………透君』
向こうはこちらに気づいておらず実質上盗み聞き状態である。
「呪いって…なんですか……?」
透の言葉に蒼い瞳を見開くなつめ。
「私は…私は何かしなくていいのですか…?」
不安そうな彼女に紫呉は静かに微笑むと
「……君が君でいることだよ。」
そして今はまだ言えないと謝っていた。その紫呉の言葉になつめはその場を駆け出す、向かった先ははとりの家。
『はりぃ!!』
インターホンも押さずにドアを開けると許可も得ずにずかずかと奥へ進んでいく。
「なつめ!どうしたの〜?本家に来るなんて珍しいねっ」
嬉しそうな紅葉を相手にもせず真っ直ぐにはとりを見るなつめ。
「なつめ…?」
様子のおかしいなつめに気づいた紅葉は首を傾げ成り行きを見守る。
「なつめか…どうした」
相変わらずの静かな対応に対しなつめは声を荒げて問いただす。
『透君がここに来ただろ!!』
「……あぁ」
『……っ…何を話した!?』
いつものなつめからは考えられないほど興奮した彼女にさすがの紅葉も唖然とするが、はとりは黙ったまま椅子から立ち上がるとなつめの前に立った。
ただ何も言わず二人は視線を交えるだけ…
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