「…で、どうして?」

『何が?』


きょとんと見上げてくるなつめを見てため息をつく由希。



なつめが転校してきた初日の放課後、先ほど夾とまたやり合った由希は家路についていた。…何故か隣になつめを連れて。


『てかさ…今日ゆんちゃん、夾ちゃんのこといいなーって思ってたよね』

「…っ!?///」

なつめの唐突な言葉に一気に顔を赤らめる。そんな由希を見てけらけら笑うなつめはとても無邪気に見えた。



『夾ちゃんのいいとこはあーやって物の怪を怖れずに人と接するとこだよねー!』


『あたしも見てて羨ましいもん!』と笑う彼女の横顔は少し寂しげに感じる。

なつめも物の怪つきのため今日いくら男子に話しかけられても笑顔で交わしていた。



慊人に言われたように…。






『ゆんちゃんにはないとこだね。』

「…っ…知ってる!言われなくても知ってるんだ!!」

感情的になる由希に優しく笑うなつめ。




『でもね、気づいてほしいんだ』「………」

『夾ちゃんには夾ちゃんの、ゆんちゃんにはゆんちゃんのいいとこがあるんだよ。』

由希は小さな手を広げてにっと嬉しそうに笑うなつめにぽーっと見とれてしまう。



『ゆんちゃんはね、いつも他人の心配ばっかしてんの!自分が辛くてもゆんちゃんは絶対人を見捨てない…手を差しのべてくれるんだ。』


自分のことのように嬉しそうに話すなつめに由希は恥ずかしくなってすっと目をそらす。



『他にもね――』

「もういい!///…わかったよ」

『まだいっぱいあるのに〜』


少し不満そうに笑う彼女。



「(いつも手を差しのべてくれるのは君の方だ)」


そんな言葉は呑み込んで歩き出す。



『夾ちゃん、今ごろ掃除頑張ってるかな?』

「…で、なつめはなんでついてきてんの?本家は向こうでしょ」


由希の言葉に首を傾げるなつめ。



『あれ、知らないの?』

「…え?」

























「…ただいま」

『ただいまぁ!』


二人の声に勢いよく駆けてきたのはこの家の主、紫呉だった。



「やぁ!なつめちゃん!待ってたんだよ〜!!久しぶりだね〜」

『しーちゃん!久しぶりー♪出来れば会いたくなかったかもだけど。』


にこっと可愛らしい笑みを浮かべながら発せられる辛辣な言葉に紫呉は「きゃ、こわい」と笑う。



「紫呉、聞いてないんだけど。」

「言ってないもーん。」


紫呉の反応にけらけら笑うなつめと青筋を浮かべる由希。



『まぁいいじゃん!お腹へったー!!あたし肉食べたい!肉!!』

「「…………」」

黙り込む由希と紫呉をきょとんと首をかしげながら見つめる。二人の口許はへらっと苦笑するだけだった。







 


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