村人×高校生
3年前、学校の屋上の扉を開けた先は何故かお花畑だった。

数秒固まりようやくおかしい事に気付いて後ろを振り向くと、さっきまで屋上に行くために上ってきた階段はもうそこにはなく、後ろも綺麗なお花畑になっていた。
お花畑の真ん中にポツンと扉だけがあるシュールな光景に、何が何だかわからず『これはもしかして夢なのか?』と考えた僕は、服が汚れるのも気にせずお花畑に寝転がって目を瞑った。


瞑ってから数分して目の前に影ができ、ゆっくりと目を開けると
小学生ぐらいの男の子がしゃがんで僕のことを見ていた。
「…?お兄さん何してんの?」
「君には僕が何してるように見えるかな?」
「え?んー…、寝てる?」
「うん。寝てる」
「別に寝ててもいいけど、こんなところで寝てると獣に襲われるよ」
「獣とは…?」
「熊とか狼とか…。この辺よく出没するんだよ」
「あっ、それはやべぇや…起きる」
急いで起き上がり、服に着いてる土や草を手ではたき落としていると少年も手伝ってくれた。

「お兄さんはさぁどこの人?この辺では見ない顔だし、何この服?」
「なんかわからないけど、あそこにある扉開けたらここに来てた。」
ここに来た原因である扉を指差すと、さっきまであった扉は既にそこにはなくなっていた。
『なに言ってんの?何もないよ』『さっきまではあったんだけどなぁ、なんか消えちゃったみたい。』『へー…ご愁傷様?』『ありがとう』
少年と緩い会話を続けているうちにだんだんこれは夢じゃなく現実なんだと理解してきた。

僕はどうやら学校の屋上から見知らぬ世界へとワープしてきてしまったらしい。





僕の通っていた学園に時期外れの転校生がやってきた。
ちょっとどころじゃなくだいぶ変わっているこの学園で、転校して数週間で転校生は学園を大きく動かす存在となった。

転校生は良い意味でも悪い意味でも常識外れの無邪気なお子様だった。
そんな転校生に学園の人気者達は皆彼に惚れてしまった。
そのせいで今までおかしいながらも平和に保たれてきた秩序が一気に崩れ、人気者達に憧れや好意を抱いていた生徒達が転校生への反感を募らせ、転校生に手を出せない代わりに転校生に勝手に友達認定された転校生の同室者を虐めるようになった。
傍から見ても転校生が無理矢理同室者を連れ回し、人気者達と一緒にさせてるのは一目瞭然なのに
盲目な彼等は『媚を売ってる』『平凡の分際で』などと言って、転校生への苛立ちを同室者の方へとぶつけた。

僕はそれが我慢できなかった。
だから虐められてる同室者に手を差し伸ばし、何度か彼を助けた。
それが他の奴らにとって不愉快だったらしく、僕にも嫌がらせをし始めた。
くだらないものだけで特に痛くも痒くもなかったが、同室者君には何度も謝られた。彼は何も悪くないというのに…。
そこでようやく僕はおかしい事に気付いた。
この学園も、転校生も、人気者達も、そいつらの信者も、そして僕達も…
学園も転校生も人気達もその信者もみんなおかしいのはわかっていたが
長いことおかしい環境にいたせいでどうやら僕達の感覚は麻痺していたらしい。
何故僕達は反抗をしないのか、何故違う場所へ行かないのか、何故我慢しているのか
僕達は学園の中だけが世界だと勘違いしていた。
気付いた瞬間全てがバカバカしくなり『あーぁ、ここじゃない何処かへ行きたい』と、そう思いながら僕は屋上への扉を開けた。






風の噂で聞いただけだが僕が異世界に来た同じ日に、他にも2人こちらの世界へ来た奴がいたらしい。
特徴を聞いた限りでは多分転校生と同室者君だと思う。

この世界を救う神子が来たんだとこの国の王達は転校生を崇め、転校生を取り合った。
だけど本当の神子は同室者君だったらしく『神子に引っ付いてきたいらない奴だ』と早々に国から追放されていた同室者君は、隣国の王子に拾われ、その隣国が繁栄し今は拾ってくれた王子と幸せに暮らしていると聞いた。
そのことに僕は心から安堵し、彼の幸せをこれからも願った。





「いい天気だねー」
「そーだなー」
膝の上に乗っかってる頭を優しく撫でる。

3年前初めてこの世界に来た時、最初は色々戸惑うこともあったが、みんなが助けてくれたので直ぐに馴染むことができた。
それに前の世界には無い物もたくさんあり、新しい発見の毎日で楽しくて仕方なかった。

元の世界に帰りたいと思ったことは正直全くない。
ただ同室者君の事はずっと気にかかっていたから、彼もこちらの世界へ来て幸せに暮らしていると知ってからは元の世界に何も未練がなくなった。

「あの時の小学生が3年でこんな大きくなるなんてなぁー…」
「小学生って何?」
「えー?んー…子供ってこと」
「ふーん。じゃあ今の俺はもうガキじゃないってこと?」
「膝枕要求してくる奴はまだまだガキかもな」
「まぁ、ガキはこんなことしないだろ?」
襟元を掴まれ下に引き寄せられたと思ったら唇に一瞬柔らかい感触がした。
驚いて下を見るとニヤリとした顔をしてペロリと下唇を舐めた。

「…あーぁ、昔はあんな可愛かったのに…時間の流れは残酷だな」
満足そうに今度はニコニコ笑う顔に少しムカつき、鼻を軽くつまんでやった。







解説
ファンタジーが書きたいなと思ったらこんな結果になりました。

王道学園の人達はあんまり外へ行きませんよね。
学園だけが世界じゃないんだからもっと外に行けばいいのにと私は毎回思います。
なので私は外(異世界)へ連れて行きました。

位置的にこの主人公はアンチ王道話でいうただの脇役です。
王道君のせいで虐められてる人を助けて少し巻き込まれた程度。


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