散歩へ行こう
小学生低学年の時、学校からの帰り道で知らないおじさんに声をかけられた。
『可愛いね。おじさんと一緒に遊ばない?』
確かに昔の俺は可愛かったと思う。
色は白いし、背も小さくてそういうのが好きな奴等にはたまらなかったんだろう。
小さかった俺は『うん』と頷き、おじさんに着いて行った。

どんどん草の生い茂った所に連れてかれ、ちかくしておじさんは立ち止まり俺の方に向き直ると、俺におじさんの陰部を見せ『どお?』と聞いてきた。
それに『普通』と答えたらおじさんは何故かお菓子くれた。美味しかった。



小学生中学年の時、学校からの帰り道で知らないおばさんに声をかけられた。
『この辺の子?今暇?』
この時には昔みたいな可愛らしさも消え始め、平凡顔への道を辿って行っていた。
まだよくわかってなかった俺は『暇』と頷き、おばさんに着いて行った。

おばさんの家に連れてかれ、お茶やお菓子を食べていたら突然おばさんは服を脱ぎだし、俺の手を掴んでおばさんの胸に触らされた。垂れ気味だったけど柔らかかった。


小学生高学年の時、学校からの帰り道で男友達に声をかけられた。
『今日一緒に家で遊ぼうぜ』
昔とは違い日焼けで色は黒くなり、背も成長期でぐんと伸びた俺はただの平凡小学生だった。
友達との遊びに断るわけもなく『家帰ったらすぐ向かう』と頷き、家に帰ってから直ぐに友達の家へと向かった。

ゲームにも飽き、何をしようか考えてると友達はニコッと笑い俺のズボンへと手を伸ばし脱がせた。
『なぁ知ってるか?ここ摩ると気持ちいいんだぜ』
そう言って俺のを扱かれるのは、友達の言うとおりとても気持ち良かった。


中学生でやっと今までのはおかしいことだったんだと気付いた。
俺が純粋で何も知らないことをいいことに沢山の事をされが、よくよく考えれば対したこともなく被害も特になかった。今の状況と比べれば…

「お姉さん何してんの?」
中学校からの帰り道、気分の悪そうな女の人を見付け声を掛けると『ゆっくり休める場所に行きたい』と言われお姉さんに着いていくとそこはラブホで、気付けば俺はベットに手を繋がれ動けないでいた。
「気持ちいいことだから大丈夫」

そのままお姉さんに美味しく頂かれ、俺の初めてはお姉さんで喪失した。


お姉さんの件からよく同じような事が起こるようになった。
主に年上の女の人にだがたまに同級生にも襲われた。
こんな平凡顔のやつじゃなくて、襲うならもっとイケメンなやつを襲えばいいのにな…女の気持ちはわからない。
でも最近は男の気持ちもわからなくなった。

高校に入ってすぐ、体調の悪さで保健室に休みに行った時、保険医の先生に襲われ、俺の後ろの初めてまでも喪失した。
それからはどこからか広まったのか同級生や先輩、後輩、先生に誘われヤるようになった。

こんな平凡の何がいいのか全くわからないし、男相手に欲情する男も、上に乗って勝手に腰振る女も正直気持ち悪いし意味がわからない。
だけど行為自体は気持ちよく、処理には困らないので断りはしない。


大学に入ると恋人のいる女にしつこくアプローチされ始めた。
ヤるのは別に構わないが、仮にも恋人がいるのに『付き合って』と俺に言うのはおかしいだろ。
大学内でも変わらずくっつかれていたせいで、やはり女の恋人に呼び出された。
きっと殴られるんだろなめんどくせぇと思っていたが俺の予想は外れ、何故か彼氏さんに俺は犯された。

ヤり終わった彼氏さんに『俺と付き合って』と言われ、これもこれでめんどくさいなとため息をついた。
その後何度かこの恋人と俺との3Pが続いたが、しつこく両方に『付き合って』と言われるのがだるく、大学の卒業をキッカケに連絡を途絶えさせた。


社会人になると酒の勢いで関係を結ぶことが増えた。
そのせいで次の日起きるとベタベタ絡みついてきたり、『合鍵がほしい』『好き、愛してる』『親に挨拶しに来て』『一緒に住もう』と1回ヤッただけで恋人気取りをする奴が増え、そのたびに『お前ら一回致しただけでなんで恋人気取りしてんだよ?気持ち悪りぃから。別にヤりたいなら何回でもヤるけど、そーいうのやめてくんない?ウザい』と言うが離れて行くやつはあまりいなかった。

その中でもしつこい奴が既成事実欲しさにゴムに穴を空け、それを使わされたせいで妊娠させてしまった。
子供は元々好きで『可愛かったらいいな』と思いながらもその女と結婚した。
その結婚生活も、俺が今までと同じように女とも男とも求められたらヤッていたことで破綻し、子供が産まれて直ぐに俺達は離婚した。


それからはたまに子供の顔を見に元妻の所へ行き、私生活では求められたらヤり、仕事では結果的には枕営業という形で
どんどん俺の会社での地位は高くなっていった。







長い人生だった。
気付けば80になり定年退職からもう20年も経っていた。
仕事をしていた時に偉い地位についていたおかげで、年金は一人では使えきれない程もらっている。
それに孫の話によればあと数ヶ月でひ孫の顔を見れるらしい。
嬉しい限りだ。

昔と比べれば俺の生活は静かになった。
趣味も散歩と、実に老人らしい趣味だが、俺はこの散歩をしている瞬間が幸せでたまらない。
今まで俺は周りに流され生きてきた。
だからか初めてゆっくり外を歩いて景色を見た日、美しさに自然と涙が溢れ出てきた。
自然の美しさも人々の幸せそうな顔も、何十年も生きてきて初めて気付いた。
俺は人間として欠けてる部分が多すぎた。

俺はずっと人を愛することを知らなかった。
どれだけの人と関係を結んだかわからないが、俺にとって全てはただの性処理で、それ以外に意味はなく、そこには一度も愛はなかった。
我が子はもちろん好きで愛しているがそれは父性で、誰かを想い愛したことはなかった。
だけどそれは昔の話しで、今は違う。

「おはようございます。古谷さん」
「おはようございます。金子さん」
公園のベンチに座り桜を見上げていた古谷さんに声をかけると、こちらに気付いた古谷さんがシワシワな顔をさらにシワシワにさせ、ニコリと笑う。
その顔に俺の心がジンワリと温かくなる。
俺はこの年で初めて恋をした。
何も飾り気のない古谷さんの笑顔を見た瞬間『この人と出会うために俺は今まで生きてきたんだ』と思う程衝撃的で、どんな形でもいいからこの人とずっと一緒に居たいと、初めてそう思った。

「金子さん、寒くないですか?」
「古谷さんこそ大丈夫ですか?」
二人で桜の並木道を手を繋いで歩く。

初めて会ってから何回も一緒に散歩をした。
そのたびに好きな人の隣を歩ける幸せや、今まで見えていなかった景色を知る感動に涙を流した。
老人になると涙もろくなるというが俺の場合若い頃あまり泣かなかった分、今頃になってその涙が溢れ出して止まらない。
そのたびに古谷さんがその涙をすくい『金子さんは行きたい場所ありますか?』と聞かれた。
その問いにいつもは具体的に『梅を見に行きたいです』と答えていたが
その日は『古谷さんと居れればどこでもいいです』と答えた。
そんな俺の返事に少し驚いたあと『僕もずっと金子さんと居れればどこでもいいと思ってました』と笑った。

しわくちゃの爺さん二人が手を繋いで歩いてる姿は周りから見れば異様な光景だろうが、
俺達は気にせず二人で笑いながら散歩をする。

幸せなこの瞬間が一秒でも長く続きますようにと祈りながら
今日も二人で隣り合って散歩をする。






解説
ヤリチンビッチの初恋を書きたかった結果がこうなりました。お疲れ様てす。

きっとこの主人公には特殊なフェロモンがあったんじゃないかと私は思います。平凡なのにこんなにモテるのはおかしいですからね。ある意味ファンタジーです。

主人公の人生は全体的に普通じゃなかったので、この先古谷さんと一緒にデートしたり旅行したりと、生きてる限り二人で色んなことして幸せにほのぼのしていってほしいです。


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