先程からずっと二人の間に、近づくでも遠ざかるでもなく、一定の間隔を保ち続けたまま存在する微妙な距離。

こうして二人きりで出掛けるというのは初めてのことで、緊張して一体何を話せばいいのかわからない。

「いい天気だね。」

「…うん。」

「…晴れてよかった。」

「…うん。」

気まずい沈黙を破ろうと一生懸命話し掛けてくれているだろうアレルヤに、オニキスが返す言葉と言えば会話の繋がらない短い相槌ばかり。



こうして一緒にいられるだけでも楽しい。隣に居てくれるだけでも嬉しい。

だから、もっとそれを伝えたいのに。もっと沢山話したいのに。そんな気持ちだけが空回りして、話したいと思えば思うほど何を話せばいいのかがわからなっていく。

「…。」

再び流れた少しばかり居心地の悪い空気に、何だか申し訳ない気持ちで一杯になってオニキスは頭を垂れた。



「オニキス、あの、」

俯いてしまったオニキスを見て、アレルヤはふと思いついたように立ち止まる。名前を呼ばれると、オニキスは弾かれたようにぱっと顔を上げてアレルヤを見上げた。

「…何?」

真っ向から視線がぶつかり、一瞬目を逸らして。それから意を決したように再びオニキスを見つめて、銀色の瞳が言った。

「手、繋いでも…いいかな?」





差し出された手を取れば、躊躇いがちに絡まる指先。気恥ずかしさと同時に、それに勝る安堵感。

「行こうか、オニキス。」





近づく

ゆっくりと、確実に。











20080509



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