気づいていた。
君の視線が誰を追っているのか。
わかっていた。
君の想いが誰に向けられた物なのか。
ねぇ、知ってる?いつも君は、無意識の内にずっと彼の方ばかり見てるんだ。
本当は、こんなことを聞くつもりなんてなかった。普段の君を見ていれば、答えを聞くまでも無かったから。
「オニキスは…ロックオンのことが好きなのかい?」
それでも敢えて尋ねたのは、確認の為か、どこか期待を捨て切れていなかったのか。
「…え…えぇ!?」
唐突な、かつ単刀直入な質問に、オニキスは瞬く間に顔を真っ赤に染めて慌てふためく。
その反応だけで十分だった。
「…そっか。」
余りにもあからさま過ぎるその反応にアレルヤは思わず苦笑を漏らす。そんな彼の心中を知る由もないオニキスは、単純に自分の反応を笑われたと思ったのか、まだ赤い頬を押さえて俯いた。
「ロックオンが…好き…、なんだ…。」
「………うん。」
やっぱり、そうなんだ。躊躇いがちに返ってきた肯定の言葉は、重く鉛のように胃の腑に沈み込んでいった。
陽気で、優しくて、面倒見がよくて。器量もよく、頼れる兄貴分。
人に好かれる要素を十二分に兼ね備えたロックオン・ストラトスという男に、自分などどこを取っても到底太刀打ち出来はしない。出来る筈が無い。
「叶うといいね。」
本音を飲み下して、アレルヤはオニキスに偽りの微笑みを向けた。瞳に揺れた内面を映してしまわないよう、ただそれだけに注意しながら。
「ありがと、アレルヤ。」
はにかんだようなオニキスの笑顔から、反射的に視線を逸らす。
叶ってほしくない。結ばれてほしくない。その目に自分以外の男を映してほしくない。けれど君に想いを伝える勇気すら持てないような僕に、そんなことを思う資格も無い。
だから、どうか。
君には幸せになってほしい。
この気持ちに、諦めがつくように。
Dilemma葛藤を抱えたまま、また一日が過ぎていく。
20080805
続く。
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