行き交う人々で賑わう街の一角。こ洒落たカフェのオープンテラスに、四人の青年と一人の少女が座っている。

「ん、美味しい!」

大きな苺の乗ったショートケーキを頬張り、オニキスは幸せそうに顔を綻ばせた。そんなオニキスを、四人は思い思いに見つめる。こうして見ると、彼女が普段男顔負けにガンダムを操るマイスターの一人であるとはとても思えない。

「嬉しそうだな、オニキス。」

「だって、普段こんなのなかなか食べられないじゃない。」

刹那の言葉に答えながらも、オニキスはフォークを動かす手を止めようとしない。一口一口ゆっくりとケーキを口に運んでは、幸せそうに目を細める。

「そんなに美味いのか?」

「久しぶりだから尚更ね。ほら!」

一口分をフォークに乗せて刹那の口元に持っていく。一瞬躊躇った後、刹那は口を開けてケーキを味わった。

「どう?」

数回咀嚼して飲み込んだ結果。

「…甘い。」

少し顔をしかめて呟く。オニキスは思わず吹き出した。まぁ、刹那らしいと言えば刹那らしいのだが。

「あはは、当たり前だよケーキだもん!刹那甘い物苦手?あ、でもアレルヤはパフェとか食べたりするのね。何か意外かも。」

アレルヤは手を止めて、少しはにかんだように笑う。

「こんな時くらいしか食べられないからね。駄目かな?」

「ううん、全然駄目じゃない!(むしろ可愛くていいと思う!)ところで、そのパフェ美味しい?」

そう言ってオニキスはアレルヤの前に置かれたチョコレートパフェに目を落とした。図々しいとは思いながらも、少し味見したいなぁと無言でねだってみると。

「食べてみるかい?」

「やたっ!!」

差し出されたアイスを口に入れる。ひんやりした冷たさと、バニラとチョコレートソースの甘い風味が口一杯に広がった。

「ん、美味しい!!」

オニキスは至極楽しそうだ。アレルヤはそんなオニキスの様子を見てふと頬を緩めた。

「でも、何だか不思議な感じだね。ミッション以外でこうやって五人で出掛けたのは、これが初めてなんじゃないかな?」

「…あぁ。」

「そういや、五人揃ってってのは無かったか。誘ってくれたオニキスに感謝だな。」

「どういたしましてー。」

オニキスは嬉しそうに笑い、ちらりと隣を見やった。先程からほとんど会話に参加していないティエリアの顔色を伺うように見上げる。

「たまには悪くない。」

視線に気付いたティエリアは、ティーカップを置いて少しだけ表情を緩めた。ティエリアの“悪くない”は、つまりそれなりに楽しんでいるということだ(と推測する)。

「じゃあ、また誘っちゃおうかな!ん、ご馳走様でした!」

最後に残してあった真っ赤なイチゴを口に放り込むと、不意にロックオンがオニキスの頬に手を伸ばした。

「オニキス、クリームつけてるぞ。」

「え!?」

ロックオンは緑の目を細めて笑い、オニキスの頬についた生クリームを指ですくって舐め取る。

「ったく、子供かっての。」

「あ、ありがとロックオン。」

「…そろそろ時間だ。」

「え?もうそんな時間かい?」

「結構話し込んじまったな。そんじゃ、行くとしますか。」

「何々?ロックオンの奢り?」

席を立ったオニキスは、ロックオンの腕に抱きついて腕を組んだ。上を見上げると、ロックオンはオニキスの髪をくしゃりと撫でる。

「お前な…。まぁ、オニキスの分だけなら奢ってやるよ。あとの男共は後でちゃんと金返せ。」

「やった!ごちそうさまロックオン!!」

「…ケチだな。」

「な…、刹那お前なぁ!」

「本当、オニキスに甘いよね。ロックオンは。」

「待て、オニキス。」

ティエリアに呼び止められ、オニキスは足を止めて振り向く。

「何?ティエリア。」

「忘れ物だ。」

「あっ。」

ティエリアが手に持っている帽子を見て、オニキスは声をあげた。一つ溜め息を吐いて、ティエリアはオニキスに帽子を被らせてやる。

「君はもう少し落ち着きと言うものを覚えたほうがいい。」

「う、善処します。」

「そうしろ。」

そう言って、ティエリアはぽふ、とオニキスの頭に手を置いた。普段他人と全くといっていいほどスキンシップを取らない彼の意外な行動に少し驚いたが、オニキスは嬉しくなってティエリアに抱きついてみる。

「そうする!」

「なっ、抱きつくな…!」

「おーい、置いてくぞ二人共。」

「あ、待って!!!」





やかな時間に包まれて

また皆で来られますように。











Req≫逆ハー風

20080128



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