「急な任務が入った。今夜は帰れそうにない。」

申し訳なさそうに表情を曇らせるケータイの端末画面越しの彼に、オニキスはマンションのベランダで夜風を浴びながら苦笑を返した。

「そう、仕方ないわ。私なら平気だから。」

「すまない、本当に。」

重ねて詫びるグラハムにオニキスは軽く首を振る。彼の身分や地位を考えれば、それはごく当たり前のことだ。

「いいのよ気にしないで。これしきの事で機嫌を損ねるようじゃ、ユニオンのエースパイロットの恋人なんて勤まらないわ。」

そうでしょう?と、笑い混じりに答えるオニキス。努めて笑顔を浮かべるその表情の影に、隠しきれない哀切の色が潜んでいることをグラハムは見逃さない。

「週末には必ず戻ると、約束する。」

「えぇ。待ってるわ。…あら、流れ星。」

不意にオニキスが視線を上げた。恐らくは空を見上げたのだろう。自身もチラリと窓の外に目を向け、星一つない暗い夜空を見る。酷く味気なく感じるその景色に、グラハムは思わず呟いた。

「…君の瞳に住めたなら、君と同じ景色が見られるのにな。」

「グラハム…」

オニキスは一瞬面食らったように目を丸くして、直ぐ様破顔する。

「貴方ったら気付いてないの?もうすっかり住んでるくせに。」

「オニキス?」

彼女の浮かべた穏やかな微笑みに思わず目を奪われて見惚れると、はにかんだようにオニキスが告げた。

「…目を閉じても貴方の姿が離れてくれないのよ。」





の中の貴方











20080420
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君の瞳に住めたなら、君と同じ景色が見られるのにな…。



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