見返りを求めて渡すわけではないから、毎年ほとんど忘れがちになってしまう“お返し”の行事。
「よォ、オニキス。今日はホワイトデーなんだってなァ?」
今年もそれはやって来て、そしてやっぱり例年のごとく、言われるまですっかり頭から抜け落ちていた。
「あ。そう言えば…。」
少し離れた所にいるオニキスをハレルヤはくい、と手招きして呼び寄せる。
「何?ハレルヤ。」
言われるままに近づくと、ハレルヤは長身の体躯をオニキスに覆い被せるように折り曲げた。
「オニキス、お前にいいモンやるよ。」
至近距離でそう言って笑い、オニキスの後頭部を右手で支えて、唇に口付ける。
「…っ!」
舌が割って入り、何かが口の中に送り込まれた。同時にストロベリーの甘い味が口一杯に広がる。
「甘…。」
ゆっくりと唇が離される。口の中には一粒の飴玉。見上げればそこには金色の瞳。
「チョコのお返しだ。」
ストロベリーキャンディ甘い甘い、お返しのキス。
20080314
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