「あぁあー!!無いッ!!!」
台所からオニキスの悲鳴が聞こえた。ソファに横たわっていたハレルヤは、突然の大声に少し驚いて身を起こす。
「ンだよ。うるせぇ奴だな。」
冷蔵庫の前で立ち尽くしていたオニキスはハレルヤの方を向くと金色の目をキッと睨み付けた。
「ハレルヤ!私のプリン勝手に食べたでしょ!!」
「あァ?」
「知らないとは言わせないわ!ここに入れてあったプリン!」
そう言って冷蔵庫を指差す。
「あー、あれか。」
そういえばそんな物もあったっけか、とハレルヤが呟くと、オニキスは益々声を荒げた。
「あれか。じゃないわよ!何で人の部屋にある物を断りもなく食べるの!?信じらんない!」
「いいじゃねぇか、1個くらい。」
「よくない!あれはスメラギさんが買ってきてくれた限定プリンだったの!1個しかなかったの!普通のプリンの5個分くらいの値段するのよ!楽しみにしてたのに…!」
オニキスは声を震わせる。ハレルヤにしてみれば他のプリンと大して変わらない味だった気がするのだが、今それを口にするのは火に油を注ぐような物だろう。
それにしても、たかだかプリン一個に随分なご執心だ。食べてしまった物は仕方がないと言うのに、しつこく喚くオニキスにいい加減イライラしてきた。
「…ったく、プリン1個くらいで、小せぇ女だな!そんなんだからいつまで経っても独り身なんだろうが!」
「な…!!」
反省の色の全くないハレルヤの物言いに、オニキスは顔を強ばらせた。かっと頭に血が昇る。
「ハレルヤには関係ないでしょ!もう、出てけー!!」
傍に落ちていたクッションを拾い、ハレルヤ目がけて投げまくる。
「おい、止めろ…!」
「出てけー!!」
ボスッ。3個目のクッションが、ハレルヤの顔に見事命中した。今度はハレルヤが顔を引きつらせる。
「て、めぇ…。わかったよ。出てきゃいいんだろ、出てきゃ!!」
バタン!大きな音を立てて扉が閉まった。
「…」
わかっている。怒ってもプリンが戻ってこないことくらい、わかっている。でも本当に楽しみにしていたのだ。せめて一言、謝罪の言葉が欲しかった。
「馬鹿ー!!」
閉まった扉目がけて、オニキスはもう一回クッションを投げつけた。
翌朝。
「わ、何これ。」
テーブルの上には、行儀よく並んだ普通のプリンが5個。すぐにハレルヤだと思い至る。わざわざこれを買いに行ったハレルヤの姿を想像すると、思わず笑いが込み上げた。
会ったら、思う存分からかってやろう。
言葉には出来なくてテーブルに並べた、謝罪の気持ち。
Req≫ギャグ夢で喧嘩話
20080108
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