「今日はホワイトデーらしいが、見ての通り僕は何も用意していない。」

「うん?」

ホワイトデー当日の朝、オニキスの部屋を訪れたティエリアが顔を合わすなりそう言うので、オニキスは一体何なのだろうと首を傾げて彼を見た。

「オニキス、何が欲しい?」

「え…、いいよそんな!何も要らないよ。」

お返しが欲しくて渡したわけじゃないから、と付け足すと、ティエリアは少し眉を寄せて困惑の表情を浮かべる。

「それでは僕が困る。」

「ティエリアが?何で?」

「貰うだけでは、フェアじゃない。」

「…!」

ティエリアらしい言い分に、オニキスは思わずクスクスと笑い声を洩らした。

「何でもいいの?」

「あぁ。」

「じゃあね…」

オニキスはティエリアの胸に寄りかかり、両腕を体に回して朱い瞳を見つめる。

「今日一日ずっと一緒にいてほしい。」

「そんなことでいいのか?」

身長差の所為で自然と上目遣いに自分を見上げてくるオニキスを、ティエリアは少し頬を緩め、ぎゅっと抱き締め返した。

「あたしにとってはそれ以上嬉しいプレゼントなんて無いわ。」





何もらないから

ただ傍にいてくれたなら。











20080314



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