世間はバレンタインデー。経済特区・東京にあるデパートのチョコレート売場は、当日であるにも関わらず多くの女性客で賑わっていた。棚に陳列されたチョコレートの箱を手に取りながら、オニキスは隣に立つティエリアを見上げる。

「ティエリア、バレンタインデーってどんな日か知ってる?」

「異教徒迫害により殉教したキリスト教の聖人ウァレンティヌスの誕生日だろう。ユニオンやAEUでは、求愛やプレゼント交換などの風習があるらしいな。」

「さすが、博識。日本では女性が好きな男性にチョコレートを贈る習慣があるのよ。」

人混みを縫って売場を見て回る。ここ数日ミッション続きでろくに時間を取れず事前に準備しておくことが出来なかった為、こうしてデートがてら地上に降りて買って渡すことにしたのだ。

「ミルクチョコ。ホワイトチョコ。ビターチョコ。ティエリア、どれがいい?」

見繕った何種類かの箱を一つずつ指差して尋ねると。

「俺はこれでいい。」

ティエリアはくい、オニキスの腰を引き寄せて、そのまま顎をすくい上げる。

「ティ、ティエリア?」

周囲の視線が気に掛かり狼狽するオニキスの唇に、ティエリアは人目も憚らずにキスを贈った。





Valentine's Day

いつもより素直に愛を伝えられる日。











20080214



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