窓の外は上天気。けれど今はそんな快晴の空が恨めしい。

別に取り入って曇りや雨が好きだという訳ではない。ただ、晴れた空を眺めるには、少し気分が塞いでいるだけ。

こういう時は一人で過ごすに限る。こんな自分を人に見られたくないし、誰かに会うと八つ当たりしてしまいかねない。だから一人で塞いだ気分が過ぎるのをじっと待つ。

けれど、それはすぐに阻まれた。


「こんな所にいたのか。」

「あれ…ニール?」


聞き慣れた声に振り向けば、ゆっくりとこちらに歩いてくる人影が目に入った。
隣に腰を下ろし、私の顔を覗き込んだ後、ニールは小さく苦笑する。表情から、あまり機嫌がよくないことを察したのだろう。


「何か悩み事か?」

「ううん、そんなんじゃない。」

「そうか?ならいいが…」


俯いた頭に重みが掛かる。無造作に置かれたニールの手のひらが、私の頭頂部をすっぽりと覆った。
あやすようにぽんぽん、と叩かれて、するりと髪をすくように撫でられる。気恥ずかしかったが嫌ではなくて、黙ってされるがままに身を委ねる。


「なぁ、オニキス。忍耐強いのはお前さんの長所でもあるが、辛い時は我慢しなくていいんだぜ?」

「…してない。」

「あまり無理しなさんな。」

「………うん…」


引き寄せられるままに、ことんと頭をニールの胸元に預けた。穏やかに響く鼓動の音に、胸中に蟠っているもやもやが少しずつ解されていく気がする。

どうしてこの人は、一番望んでいる時に、一番望む接し方をしてくれるのだろう。我ながら強情な私を上手く甘やかすことが出来るのは、きっとこの人しかいない。


「ありがと。」

「どういたしまして。」


隣を窺い見上げれば、優しく細められた翠の瞳。何も言わずに隣にいてくれるだけで、不思議と気分が凪いでいく。
目を閉じる。肩越しに感じる温もりに触れながら、肺の奥まで吸い込んだ空気をゆっくりと吐き出した。





呼吸











20111106



00TOP