その少年と初めて会ったのは、研究施設の中にある小さな庭だった。

『あなた…、あなたたち、だれ?』

『…え?』

少年は辺りを見回して、庭には自分とその少女しかいないことを確認して、少し驚いたような顔をした。そして、突然ガラリと身に纏う雰囲気を変える。

『おまえ、なんでオレたちが二人いるってわかった?』

それが、彼らとの出会いだった。



「オニキス!!」

名前を呼ばれて顔を上げると、ハレルヤが歩いてくるのが見えた。オニキスは立ち上がってハレルヤを迎える。

「ハレルヤ!また抜け出してきたの?」

「おー。アレルヤの野郎がオニキスに会いたいってうるせーんだよ。」

『なっ、ハレルヤ…!』

「ははっ!照れてやんの。抜け出せたのはオレのお陰だろ?…わかったわかった。……ったく。」

何も知らない人が見れば、ハレルヤが一人で話しているようにしか見えないが、オニキスは狼狽えるアレルヤの様子を感じ取って思わず笑った。ハレルヤは少し俯いて、再び顔を上げた時には、銀色の瞳が前髪の隙間から覗く。

「会いに来てくれてありがと、アレルヤ。凄く嬉しい。」

「…!どういたしまして。」

この閉ざされた世界の中で、アレルヤとハレルヤの存在はオニキスにとって唯一の癒しだった。そしてそれは、彼ら二人にとっても同じだ。苦痛に満ちたこの場所で正気を保つのは難しい。実際、これまでに何人もの仲間が姿を消していった。

「元気だった?オニキス。」

「うん。アレルヤは?」

「僕も大丈夫、元気だったよ。」

アレルヤは目を細めてにこりと微笑んだ。それから瞳を宙に彷徨わせる。

『何だよ、オレへの心配は無しかよオニキス!』

「…………、ハレルヤも元気だって。」

「ふふっ、ごめんハレルヤ。二人とも元気でよかった。」

本来ならば管理されている階が違う二人と会うことはほとんど無いのだが、こうして時折、危険を犯してオニキスに会いに来てくれた。会話の話題になるようなことはほとんど無かったが、昨日見た夢の話とか、窓の外から見えた景色のこととか、そんな取り留めもない話をしては笑い合う。

「何をしている、No.D-0081。」

「……あ!」

近づいてくる男の姿を見て取って、オニキスはびくりと体を震わせた。研究員はオニキスの前に立ち、細い腕を掴んで引っ張る。

「痛…っ…!!」

「は…、離せ!!嫌がってるじゃないか!」

アレルヤが研究員の腕に掴み掛かるが、振り払われて転ぶ。

「貴様も戻れ、No.E-0057。」

「アレルヤ!…離して!!」

「抵抗するな!」

なおも拒む素振りを見せると、研究員は手を振り上げた。オニキスは目を瞑る。しかし予想していた衝撃を感じない。恐る恐る目を開くと、研究員の腕を掴んだハレルヤの姿が映った。

「気に入らねぇんだよ。何様だ、てめぇ。」

「ハレルヤ!!」

「貴様…!」

研究員は掴まれていない方の手で小さな拳銃を取り出し、ハレルヤに突き付け威嚇する。しかし金の瞳は怯むどころか、一層凄味を増した。

「何だ?オレを撃とうってのか…?やってみろよ。その前にてめぇの首へし折ってやる。」

「くっ…!」

「失せろ。」

研究員が拳銃を降ろしたのを見て、ハレルヤは腕を掴む手を解いた。走り去る後ろ姿を睨み付けて悪態をつく。

「けっ、ざまぁねぇな。…………オニキス、平気かい?」

「う…、うん。」

アレルヤに両肩を掴まれて、オニキスはこくりと頷いた。そのままオニキスの体を引き寄せてぽんぽん、と背中を叩くと、安心したようにアレルヤの体に腕を回しす。

「平気。ありがとう、アレルヤ、ハレルヤ。」

「大丈夫だよ、オニキス。僕が、僕達が…」

「……お前を守ってやる。」





この庭の

僕は、君を守る盾に。
オレは、お前を守る剣に。











Req≫幼少期アレハレの甘夢

20080124



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