4

「全く、何をしてるんですかあなたは」

コナンくんに呼ばれて沖矢さんが工藤邸から出てくると、呆れたようにわたしの前に立った。

「あはは…安室さんのかっこよさに腰が抜けた」

ほんとは怖くて腰が抜けたなんて、口が裂けても言えない。
安室さんがかっこよかったのは本当だから、嘘ではない。

「はぁ?……ほら、立てますか?」

手を差し出してくれる沖矢さん。
やっぱりかっこいいな!このやろー!

「ん、…あ、あれ…よっ…ふっ。…ダメだ、立てない」

わたしは沖矢さんの手を取り、立ち上がろうとするも思うように力が入らなくてなかなか立てない。
これが面白いくらいに立てない。

こんなことってアニメだけだと思ってたのに、本当にあるんだ。

さて、どうしたものかと苦戦してると…

「はぁ…仕方ない」

と言って見かねた沖矢さんが、わたしの背中を支えながら膝の裏に手を入れる。

こ、これは……お姫様抱っこ!!

「えっ!ちょ、ちょちょ!沖矢さん!!」

近くに沖矢さんの顔がある。なにこのイケメン……。変装って全然わからないんですけど!?

「少し黙っててください」

1人でわたわたしてたら、沖矢さんが開眼した。

「おっふ……そこで開眼は反則でしょ…」

狼狽えるわたしを横目に、フッと笑う沖矢さん。

よくわたしの扱いを知ってらっしゃることで……。

「じゃ、あとは昴さんに任せてオレ達は博士の家でケーキ食べるぞ」

いつの間にかコナンくんは皆を連れて阿笠邸に向かおうとしてた。
というところで、歩美ちゃんがわたしたちのそばにやって来た。

そうだった…子どもたちまだいたんだった。

ちょっと気まずいわ!!と思ってたら

「茜お姉さん、わたしたちを守ってくれてありがとう!」

歩美ちゃんが満点笑顔でお礼を言ってくれた。なんてかわゆいんだ!!
天使だ、天使がいる……。

「た、大したことしてないけど、怪我がなくて良かった。
さ、みんなはケーキ食べておいで!」

おっと、思考が別の所に行ってたわ。危ない危ない。

「お姉さんは来ないの?」

「わたしはほら、こんな状態だから。また今度ね」

なんかすごい恥ずかしい格好だけど、歩美ちゃんに笑って見せる。

「そっかぁ。じゃあ今度ぜったいだよ?」

「うん!約束」

わたしはお姫様抱っこされたまま歩美ちゃんに小指を差し出した。

それを察した沖矢さんが少し屈んでくれる。

「「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます!指切った!」」

二人で約束をして、それから歩美ちゃんはコナンくんたちと阿笠邸へ。

わたしは沖矢さんと工藤邸へと戻る。

その途中。

「心配してたぞ」

「え?」

急に沖矢さんから赤井さんに声が変わって、そしてその深い緑色の瞳で射止められる。
不覚にもドキッとしてしまった。

「ジン。
お前がなかなか帰ってこないのを心配していた」

「ジンさんが……?うそ…そんなまさかぁ」

「嘘じゃないさ。まぁ、ジンからの説教は覚悟しとけよ」

「…なんてこった」

そうこう話しているうちに、玄関までたどり着いてしまった。

この状態はさすがにまずいので、沖矢さんに頼んで下ろしてもらう。
そうじゃないと沖矢さんというか、赤井さんの命がキケン!

そして、沖矢さんが玄関のドアを開けると、そこには苛立った様子のジンさんが仁王立ちしていた。

仁王立ちがなんて様になる人なんでしょう……。
というか、股下スカイツリーは伊達じゃないな。ほぼ脚!

「た、ただいまー……なんつって」

怒られるのが怖くて、わたしは沖矢さんの後ろからひょっこりと顔をだす。


「遅せぇ。一体どこをほっつき歩いていた」

「あはは、いやぁ、そのーなんていうか…イベント(事件)に遭遇しまして…」

「あ"ぁ?」

ひぃぃっ…ヤバいジンさんの眼光が半端ねぇ。

「まぁ、いい。
さっさと買ってきたモンを
寄越せ」

「あ、はい……こちらになります」

おずおずとジンさんに買ってきた材料とタバコを渡そうとすると、パシッと手を掴まれた。

「冷えてるな」

「あ、あー…うん。そりゃまぁ」

事件に巻き込まれて、冷蔵車の中に閉じ込められていた、なんて口が裂けても言えない。

「風呂で暖まってこい」

そのままジンさんはキッチン、わたしはお風呂へと向かった。

その時ジンさんが何か言ったような気がしたけど……気のせいかな?










-お前が無事で良かった-







-


prev / next

bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -