それはコーヒーのような

濃厚なちゅーのあと、ジンさんはミルクと砂糖たっぷりのコーヒーを淹れてくれた。

「熱いから気を付けろ」

そう言ってくれるジンさんの優しさがすごく好きなんだけど、今は顔を見れない。

「…あ、ありが、と」

さっきの濃厚なちゅーが頭を過ってまた顔が赤くなる。

「どうした。顔を赤くして。さっきのキスでも思い出したか?」

「わぁーーっ!」

ジンさんが隣に座り、わたしの耳元で囁いてきた。

ちょっと止めて!!
そんなセクシーボイスで囁かれたら死んじゃう!

「ディープキスだけでその反応じゃ、この先が思いやられるな」

ジンさんはわたしのほっぺたに触れて、輪郭を指でなぞる。

ほっぺたから顎、顎から首筋それから鎖骨と。

その感覚に背中がぞわぞわしてしまう。

「ジ、ジンさんのばか!
あんなに深いちゅー初めてなんだからね!」

ぞわぞわ、ぞくぞくする感覚を誤魔化すように悪態をつく。

「初めてにしちゃ及第点だな」

「うー……」

ポンポンと頭を撫でてくるジンさん。
その顔はすごく穏やかで、うっすら笑みが浮かんでる。

「何ならもう一度してやろうか?」

顎クイされて、唇を親指でなぞられる。

「え、遠慮します…」

ジンさんの顔が見れない……目を合わせたら絶対される!
そぉーっと視線を外そうとしたが、

「何事も慣れが大事なんだぜ?」

そう言って、また深くちゅーされました。

ジンさんのキス嫌いじゃないけどね!

むしろ好きだよ!

でも、激しいんだよ!!

「んぅ…ジ、ジンさん…ま、まって…っ」

容赦なく口内を貪るから、息継ぎができない!

「は、…待つ訳ねぇだろ」

後頭部をがっしりと押さえられて、離れようにもそれが出来ない。

「んっ…ふ、…ぅ」

「…っはぁ…茜……」

ジンさんから漏れる吐息がこれまた色っぽい……。

「ジン、さん…」

「黙ってろ」

そう言うとジンさんは唇から首筋へキスを始めた。

ちょっとくすぐったいけど、ぞくぞくする……。

もうされるがまま、わたしはジンさんの背中に手を回した。

そうするとジンさんもぎゅっと抱き締める力を強くしてきた。

あぁ、ジンさん暖かいなぁ。

なんて考えてたら、鎖骨辺りにちくっとした痛みが。

え?ちょっと待って…

「…ふん。
お前は俺のもんだ」

見ると紅い痕が……俗にいうキスマーク。

そして、その痕をぺろりと舐めるジンさんと視線がぶつかる。

色気ぱねぇ……。

「ジンさん…」

「茜、……愛してる」

「……唐突すぎる」

「たまには言葉にするのも悪くねぇからな」

「うん…わたしも愛してるよ」

そして自然と重なる唇。

やっぱりジンさんとのキスは好きだなぁ。

時には激しいけど、優しくて甘いキスでジンさんの気持ちがすごく伝わってくるんだ。

甘ったるいキスに体全部が心地良い麻痺状態に陥る。
でも、この恍惚とした感覚に溺れていたいと思ったのに、唇を離されてしまった。

「せっかくのコーヒーが冷める」

「そうだね。せっかくジンさんが淹れてくれたやつだもんね…」

「そんな物欲しそうな顔をするんじゃねぇよ」

「し、してない!」

「この先は、まだお前には早いからな」

意地悪そうな笑みを浮かべて、ほっぺたにちゅーしてきた。

うぅ……そりゃまだ心の準備ができてないけどさ、ジンさんはそれで大丈夫なのかな?

「お前の処女を貰えるなら、幾らでも待ってやる」

「な、なんで処女ってわかるのよ!てか、心の中を読まないで!」

「何度も言わせるな。
お前の考えてる事は全てお見通しだと。
それから、キスが下手なんだよ」

「へ、下手で悪かったわね」

「別に悪くはねぇよ。
むしろ好都合だ。
俺が全部教えてやる。

覚悟しとけよ……茜」


不覚にもときめいてしまった。
いや、いつでもジンさんにはときめいてるけどね!!

気恥ずかしさを誤魔化すようにコーヒーを飲んだ。

温かくて、ほろ苦で甘々なコーヒー。


まるで今のジンさんのよう。





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