溢れた想い(side G)
--side G

暫く車を走らせ、適当にセーフハウスへと辿り着いた。

「ジンさん、ここって?」

「俺のセーフハウスだ」

そう答えると、ビー玉のような目をこれでもかと言うぐらいに見開くお前。

何て顔をしてやがる。

「ジンさんの、家。
家っていうか、お屋敷じゃん!ヤバい、なんかテンションが変になりそう」

そんなもんは何時ものことじゃねぇか。

「さっさと中に入れ。
コーヒーぐらいなら出してやる」

無論、こいつがコーヒーを飲めないことは知っている。

「ジンさんの意地悪!
わたしが、コーヒー飲めないの知ってて言ってるでしょ」

「どうやら俺は好きな奴は苛めたくなる性格らしい」

ふっと笑ってやると、唇を尖らせむくれるお前。

「ジンさんのドS!
……でも、ミルクと砂糖たっぷり入れてくれるんでしょ?」

むくれたと思ったら、眩しいほどの笑顔を俺に向けてきた。
ころころと変わる表情は見ていて飽きねぇな。

「ふん。
仕方がねぇな」

お前の為に、淹れてやるよ。

俺の愛でとびきり甘ったるいコーヒーを。






家に上がると、お前は物珍しそうに辺りを見回している。


「ジンさんの家……てことは、エロ本もあったり?」

こいつの突拍子もない発言に頭痛がしてくる。

「馬鹿か。
あるわけねぇだろ。そんなもん。必要もねぇ」

「そうだよねー。ジンさんならすぐに調達できそうだもんねー」

その言葉は否定できねぇ。

だが、それはお前と出会う前の話だ。
そこに愛なんてもんは存在しねぇ。

ふとお前を見ると、拗ねたような表情を浮かべている。

「おい、何を拗ねている」

「す、拗ねてない!ばか!」

そう言い捨てて、走って何処かの部屋に入っていった。

チッ……俺が心から抱きたいと思うのはお前だけだ。

後を追い、部屋に入るとお前は窓の外を眺めていた。

「……可愛くないな……」

そう呟いたのが聞こえた。

可愛くない?そんな事あるわけねぇだろ。

後ろから抱きしめてやると、一瞬ピクリと反応し、驚いたように顔を見上げてきた。

「ジ、ジンさん…っ!」

その瞬間こいつを好きだと言う想いが溢れ、気付いたら口付けをしていた。



触れるだけの口付けで止めようとしたが、無理な話だった。

俺の口付けに応えようとするお前の表情に、感情が昂る。

可愛い表情(カオ)するじゃねぇか。

触れるだけの口付けから、啄む口付け。
甘く焦らすような口付けをお前の唇に施す。


何度も唇を重ねるうちに、お前の表情が徐々に蕩けてきた。

そろそろか、と俺は唇の隙間から舌を入れお前のそれと絡める。

「んっ…ぅ」

自分の甘い声が恥ずかしかったのか、頬を上気させるお前のその姿は愛しい他ない。

慣れないキスに逃げようとする舌を絡め取り口内を貪る。

この俺から逃げられると思うなよ。

口付けをしながら窓際に追いやり、抵抗しようとする手を取り指を絡め窓に押し付けた。

何度も角度を変えて、お前の唇を口内を堪能する。

余程の刺激だったのか、お前はずるずると崩れ落ち床に座り込んだ。

だが、俺はまだ止める気なんてねぇ。

「んっ…ぅ…は、」

慣れない深い口付けに苦戦するお前に僅かな隙を与えて、息継ぎをさせる。

赤く染まる頬に手を添えて、また深く甘美な口付けをした。

「ジ、ジン…さ、ん……」

キスの僅かな合間に俺の名を呼ぶ。
もう限界か?

仕方がねぇ。今はここまでにしといてやる。

最後に下唇をそっと食んで、リップ音を立てて唇を離した。

林檎のように真っ赤になったお前は

「…可愛いじゃねぇか」


ふっと笑って、頬にキスをしてやった。




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