姫衣「阿散井副隊長が…やられた?」
一角「ほう、副隊長をやったか」
阿散井が負けた…?こんな短時間にやられるような人じゃないと思うけど。
接近戦が得意な一護とはそもそも斬魄刀の相性は最高のはず。
一護は鬼道も使えないし、阿散井の傷もかなり深いと聞いた。
まさか…相打ちに…。
一角「こりゃあ、楽しみになってきたな」
姫衣「…そうね」
いつも上目遣いにこちらを見てきた花太郎の、少したよりない顔を思い出す。
頼りなさげだが、彼も五席だ。小隊を任される立場の彼がついていれば、傷は早めに治るだろう。
一護のやつ…危ういなぁ。
「戦時特例!!!戦時特例!!!!」
一角「なんだぁ?外が騒がしいな」
姫衣「聞いてくるね」
廊下を走っていく隊員を1人捕まえて、事情を聞いた。
副隊長を含む上位席官の廷内での常時帯刀を許可、及び戦闘時の斬魄刀の全面解放の許可が下りたらしい。
総隊長からの指令ということは、四十六室も絡んでいるのだろう。
一角「こりゃあ、太っ腹だな。あの爺さん。
もっと早く斬魄刀の全面解放の許可が出てりゃあ、俺だってあいつに…」
姫衣「はいはい、もうそれは分かったから」
わいわい騒ぎ出した一角を尻目に、姫衣は考え事をしながら、うとうとと薄い眠りの中へ意識を投げた。
―――…数時間後
人の気配を感じて意識が覚醒した。
どうやら、弓親も同じ部屋に入れられたらしい。いつの間にか同室者が増えている。
しかし、気配は弓親でも一角でもない。辺りを見回すと窓が開いていた。
風になびくカーテンが、なぜか物悲しく語りかけているように見えた。
姫衣は窓からひらりと外に出ると、屋根へと登った。
一角「行ったか」
弓親「そのようだね」
姫衣が窓から姿を消すと同時に、二人は目を開けた。
一角は姫衣がいたベッドを見ながら、しみじみとため息をついた。
一角「本当に…あいつは、過去を知っちゃいけねぇのかよ」
弓親は一角に言っているのか、自分に言い聞かせているのか分からず、少し苦笑をまじえながら言った。
弓親「仕方ないだろう。
彼女の過去を教えた者も、記憶を知った彼女も、知ってしまったが最後…
死んでしまうって話じゃないか」
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