姫衣「ねぇちょっと待って」
蒼助「なんだよ照れてる場合か」
姫衣「照れる要素がどこにもないわ!!」
姫衣は蒼助によって俵抱きにされていた。
普段感じない浮遊感が気持ち悪い。
姫衣「違うんだって。何か違うんだって」
蒼助「何が?好きだろう、これ」
姫衣「好きじゃないわ!私は米俵か!!」
蒼助「ったくもう、我儘ばっかり言いやがって」
蒼助は仕方なく姫衣を降ろした。
着物を直す姫衣を見ながら、小さくため息をつく。
姫衣「ため息つきたいのは私のほうよ!!だいたいね」
詰め寄ってきた姫衣を遮るように、優しげな雰囲気の男性がこちらへ走ってきた。
「神埼三席に桜木四席!!どなたか、お怪我をされたのですか?」
声がしたほうへ目を向けると、そこはもう四番隊の救護施設の前だった。
心配そうな顔をしながら走ってくる死神の男は、蒼助と姫衣を交互に見ながら怪我を探している。
姫衣「あ、いえ、どこも…」
蒼助「お前たちも聞いているだろう。こいつは旅禍に人質にされていたんだ。
目立った外傷はなさそうだが、一応診ておいてくれないか?」
姫衣「だから大丈夫だって」
「わかりました。桜木四席、どうぞこちらへ」
半ば強制的に救護施設の中へ連れていかれる姫衣の後姿へ、蒼助はニヤニヤと手を振った。
一息ついて十番隊へ戻ろうと後ろを向いた瞬間、地獄蝶が目の前に舞っていた。
あんまりにも驚いて尻餅をついてしまう。
蒼助「あいってててて…何だよまったく…」
地獄蝶から伝達を聞いた瞬間、蒼助は顔を引き締めた。
立ち上がって砂を払うと、一度深く呼吸をしてから前髪をかきあげた。
急かしてくる地獄蝶を煩わしそうに手で追い払い、暗い表情のままその場を去った。
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