▽
「…何やってんですか」
「ん?見ての通りだぞ、と」
「見ての通りって…ココ私の家ですよ、先輩」
「そんなの知ってるぞ、と」
「じゃあ私の家で何やってるんですか?」
「チョコ食ってる」
「んなの見れば分かりますけど」
じゃあ聞くなよ、と言ってレノはそのままチョコを食べ進めた。
「それより何の用ですか?先輩」
「用はないぞ、と」
「じゃあ何で来たんですか?ていうかどうやって入ったんですか」
「それは企業秘密だ」
「とりあえず何しに来たのか教えてもらえます?」
「そりゃあ、お前と寝るた「そうですか1回死んで出直してきて下さい」
ケイは軽くレノをあしらって、タークスの上着を脱ぎ、ハンガーに掛ける。
「何だ、お前もヤる気満々じゃねぇか!」
「黙れ」
「ちょ、一応先輩だぜ俺」
ケイはレノを睨みつけて溜め息を吐くと、そのまま夕食の準備を始めた。レノは相変わらずチョコレートを食べながら、楽しそうにケイを見つめている。
「先輩、チョコ食べるのやめてくれません?」
「太らない体質だから平気だぞ、と」
「別に先輩が糖尿病かかろうと気にしないつもりですが何か?」
「うわぁ、冷たい後輩」
「それうちの冷蔵庫に入ってたやつですよね?」
「そう」
「じゃあ今回は大目に見てあげるんで、明日私にそれと同じチョコ買ってくださいね」
「たかが100Gのチョコでそんなにカリカリすんなよ、と」
「じゃあ帰れさっさと」
レノに冷たい言葉を放ちながらも、ケイは慣れた手つきで夕飯の支度を進めていく。しばらくすると、部屋中においしそうな匂いが充満した。
「先輩、チョコ食べ終わったんなら手伝って下さい。どーせまた夕飯食べて帰るんでしょ?」
「あらら、お見通し?」
ケイはレノに皿を渡し、盛り付けるように指示した。レノは文句も言わずにそれに従う。2人並んで台所に立っているところを見ると、まあただのカップルにしか見えない。
ケイがふと横を見上げると、レノが真面目に手伝っている。改めてそんな真面目なレノを見ると、なんだかあまりにおかしかったようで、ケイは思わず笑った。
「なーに笑ってんだよ」
「先輩が真面目に手伝ってるの、おもしろいなあって思って」
「…あんまり笑うと手伝わないぞ、と」
「じゃあご飯あげませんよ」
「…」
「手伝ってくれますよね?」
「…適わねぇなあ」
レノは苦笑しながら、ケイの料理を盛り付けていく。
「今日は煮込みハンバーグかー」
「先輩、これ好きでしょ?」
「なに、俺の為に煮込みハンバーグにした感じ?」
「そうですよ」
さらりと言って、ケイは笑う。レノは少しだけポカンとケイを見つめたあと、嬉しそうに笑った。
「そりゃ嬉しいぞ、と」
「喜んでいただけて光栄ですよ、と」
ふわりと、ケイは笑う。そんなケイの頬を、レノは突然ぷにぷにとつっついた。
「…何してるんですか」
「いやー煮込みハンバーグの後にケイっていうぷにぷにのデザートを食べたいなあ、と思って」
「それ、遠まわしに私がデブだって言ってません?」
「ほっぺた気持ちいいからデブだと思ってたぞ、と」
「もう!ご飯抜き!」
「冗談だって」
そうやってじゃれ合う二人がこの後めでたく恋人になるのは、もう少し先のお話。
恋の煮込みハンバーグ(あ、レノ先輩のはこっち)
(なにこれ)
(ハート型の煮込みハンバーグです。可愛いでしょ!)
(…お、おう)2006.04.06
2011.09.18 修正
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