「ケホ…」
「ケイちゃん、風邪でもひいた?」
「…別に」
「隠さなくてもいいって、鼻声だからバレバレ〜」
「…」

いつものようにケイがいるベンチまでやって来た。そしたら少し顔を赤らめて咳き込むケイがいて、不覚にも赤い顔したケイが可愛いと思ったり。

しかしもちろん、相当心配してる俺さま。ヤバイくらいケイにハマってるなと改めて自覚する。

「まあ最近はやってるからね〜風邪」
「…流行の波に乗っただけよ」
「そんなの乗らなくていいでしょーが」
「…ほっといてよ」

強がるケイが可愛くて、抱きしめたい衝動にかられた。でも必死でこらえる、こらえないと俺じゃなくなるから。

「どれ、熱はあんのか?」
「っ、ないわよ!触らないで!」

額に触れようとした手は軽くはたかれてしまった。

「そんなことしなくてもいいでしょ〜俺さましょんぼり」
「余計な事しようとするからでしょ」
「だって顔赤いし、熱ありそうだぜ?」
「ないってば」
「ま〜た嘘ついて、俺さまに嘘はいけないな〜」
「ついてないわよっ」
「じゃあ熱はからせてよ」
「…ダメ」
「何で?」
「…」

絶対に熱あるな、こりゃ。
強がりな姫君にも参ったもんだ。

「強がりはいけませんね、姫」
「私は姫じゃないわ」
「俺さまにとってはみんな姫なの」
「相変わらず軽い人」
「悪ぅございました。ホレ、ちょっと顔かしてみ?」
「…やだ」
「じゃあ無理矢理はかるまでよっ」
「は…きゃ、ちょっと!」

無理矢理ケイの顔をひっぱって自分の額とケイのそれを合わせる。ケイが驚いたように目を見開いていた。ケイの顔があまりにも綺麗なので、直視したまま固まるチキンな俺。普通の子なら、ここでキスの1つでもくれてやるのに

しかし驚いた。
よくこんな体でここにいたものだ。

「…お前、相当熱あるだろ」
「…ない」
「嘘つくなって言ったよな」
「…」
「何度あるんだよ」

いつもの軽い口調じゃなく、強めに言ってみる。さすがに冗談を言っていられない。それくらい高熱だということ。

「…………38度…くらい」
「お前そんな状態でここまで来たのか!?」
「っ、だって!」

そう言うとケイの少しずつ顔が寂しそう歪む。そしてだんだんと顔が赤くなってくる。熱のせい、だけじゃない、と直感した。

「……が…………もん」
「ん?」
「…ゼロスが心配しちゃうって思ったんだもん」

あぁもう、なんだっていうんだ。
いつもとは違う口調で、しかも顔赤くて拗ねた表情で、おまけにさっきの行動のせいでいまだに顔が至近距離にあるわけで。それでこんなに可愛いセリフをはくだなんて、卑怯だ。

「…」
「な、なによ…もうっ顔が近いから離れてよっ!」

そう言って赤い顔を隠すようにしてオレから離れた。真っ赤なその顔は隠しきれてないのに。

「…顔、真っ赤だぜケイちゃん」
「…うるさい」

これはちょっとくらい、自惚れてもいいのか?

「ケイちゃん可愛すぎ」
「どうせ他の子にも言ってるんでしょ」
「ケイちゃんは特別」
「はいはい、嬉しいわありがとう」

いつもの口調でそう言うと、ふらつく足取りで立ち上がった。まったく危なっかしい姫君だ。

「どこ行くんだよ?」
「帰る、疲れた」

よろめきながら階段を下りていこうとする。そんなケイのもとまで行き、やんわり抱き上げてやった。
俗に言う、お姫様だっこ。

「っ、ゼロス!?」
「危なっかしいから送ってく」
「風邪うつっちゃうでしょ、降ろして!」
「ケイちゃんの風邪なら大歓迎」
「…はあ、もう怒鳴るのも疲れた…」
「でひゃひゃひゃ。じゃあ決まり」
「もう…重いって言っても降りないからね」
「むしろ軽すぎなんですけど」
「風邪うつってもお見舞いになんか行かないからね」
「へいへい、冷たい姫君だな〜俺さましょんぼり」

そう言うと、ケイは俺にそっと頭を預けると、小さな声でこう言った。

「嘘、お見舞いくらいなら行ってあげる」

風邪をひいてみてもいいと心底思った。



どうぞ僕にうつして下さい
(君の風邪なら喜んでいただきます)

2011.09.15 修正

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