「で、どうなのかしらゼロス?」
「いや、だから、あの…」
リフィルさまがすごい剣幕で俺に詰め寄る。
「ゼロスに恋人がいたなんてビックリだよ」
「ゼロスくん、恋人いたんですね…」
「それなのに今まで女の子口説いてたのか!?」
「それにはきっとワケがあるんだよ〜」
「神子…神子も本気の恋をするのだな…」
「わ、悪かったよゼロス…まさかここまで大事になるとは…」
「…しいな…お前なぁ…」
そして上から順番に、がきんちょ、プレセアちゃん、ロイドくん、コレットちゃん、リーガル、しいなだ。
なんでこんな話になったのかっていうと、しいなが口を滑らせたから。しいなに言われて以来、なるべくケイの名前は呼ばないようにしてたし、しいなの話も聞くようにした、なのに、それなのに―――
今日の晩飯のとき、しいながポロッと一言。
「ゼロス、ケイに会えなくて寂しくないのかい?」
で、今に至るわけで。
そんな会話にはやけに敏感なコレットちゃんに言い寄られて、それでがきんちょやロイドくんまで興味を持ち始めて、結果リフィルさまやプレセアちゃん、リーガルにまで広がってしまったわけだが、こんなんじゃ晩飯も喉を通らない。
晩飯の最中に言われて、みんなは晩飯よりもこっちの話が気になるらしく、ご飯にはもう手をつけていない状態だ。そう、あのロイドくんまでもが。
「…晩飯冷めちゃうし〜先に食べちまおうぜぇ〜?」
「誤魔化したってムダです。大人しく吐きなさいゼロス」
「そんなぁ〜リフィルさまぁ〜…」
「そうだよゼロス、ゼロスが話せばみんな納得するんだから」
「てめっ!がきんちょのくせに…おい、しいな。どうしてくれんだよっ」
「…終わり良ければ全てよし」
「よくねぇっ!」
どれだけ抗議しても俺の意見は聞いてくれないわけで。もうこれは腹をくくるしかないわけで。
俺は頭をガシガシと掻きながら開き直ったように一言、叫んだ
「だぁぁぁもうっ!話せばいいんだろ話せば!」
「最初からそうすればよかったのに」
「うるせーがきんちょっ!…でもいいか、もしもケイのことバカにしたらそれが誰であれ許さねぇからな!」
「だいじょぶだいじょぶ〜バカになんてしないよ」
笑顔のコレットちゃんの、気の抜けた返答。その笑顔の破壊力たるや否や、すさまじいものがある。なんだか言わざるを得ない気がした俺は、ポツリポツリと話を始めた。
「…勘違いしてるみたいだから先に訂正しとくけど、俺さまとケイは恋人じゃねぇ」
「じゃあ、一体どんな関係なんだよ。あ、まさかゼロスの片想いとか!?」
「バカを言っちゃいけませんロイドくん。なんつーか…恋人みたいな親友?」
「友達以上、恋人未満」
「そう、プレセアちゃん、まさにそんな感じ」
「ゼロスは本気なのか?その、ケイって子に」
「本気…なわけ、ない、だろ〜ロイドくん」
「嘘おっしゃい」
「う、リフィルさま…」
「あなたねぇゼロス、ケイという子の話をしているとき口許緩みっぱなしなのよ?」
「…うっそん」
「本当よ。つまり、本気で惚れているのでしょう?」
「…」
戦闘しているときよりも、みんな目が真剣だった。もう本当にやめてくれ、たのむから。
「ねぇねぇゼロス、そのケイさんってどんな人なの?」
目を輝かせながらコレットちゃんが聞いてきた。コレットちゃんの笑顔に弱い俺は、答える以外の選択肢が見つからない。俺は軽く溜め息をついて、これが最後だからな、と付け加え話した。息を吸って、一気に吐き出すように言った。
「優しくて美人で綺麗で、時々厳しくて、そんで笑顔が最高に可愛いやつ!」
俯きながら言って、みんなの反応を待った。
…が、何の反応もない。
変なことを言ったのかと思い、恐る恐る顔を上げると―――
全員ポカンと俺を見ていた。
「…俺さまなんか変なこと言った?」
「へ、変なことっていうか…」
「?」
がきんちょが慌てて訂正する。
「そんな優しそうなゼロスの笑顔、初めて見たな…って思って…」
「え…」
がきんちょが言うと、みんなコクコクと頷いた。不覚だ、コイツらの前ではあの作り笑いで居ようと思ってたのに。
「ゼロスも、あんな風に笑うんだなって、俺ちょっと感激した」
「か、感激ってロイドくん…」
「ゼロスはあんな風に優しく笑ってる方がいいよ、絶対に!」
「コレットちゃんまで…」
その後は、案の定みんなでケイに会いに行こうって話になって、俺はその場を鎮めるのに大変だった。
あれだけイライラしてたのに、なんでかなぁ。ケイの話をするのは、絶対に嫌だったのに、なのに全部話したかった俺もいて、笑おうとも思ってなかったアイツらの前で笑っちまったりして。
きっとケイのせいだ。
ケイが俺の心の雪を溶かしたせいだ。
俺は冷めてしまった晩飯をなんとか胃に送って、綺麗な夜空を見上げた。
明日も君色の空がみれますように(晴れるといいなと願いながら、俺は不貞寝でもしよう)2011.09.15 修正
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