初日の誓いー其の1ー

 




ー優羽ー




「ちょっ……と……待って下さい……」


暗闇の中数時間
息も絶え絶えに、やっとの思いでその背中を追っていた


「だらしの無い奴だな」


そう言って振り返った大久保さんは、深い溜め息を吐く


「だ……だって、こんな道……」


まるで、あの日の様な急な山道に、足は既に棒になりかけていた


「仕方ない。少し休むか」


「良いんですか?」


「………かまわん」


漆黒の夜空を、一瞬見上げて大久保さんはそう言うと、近くの切り株の上に腰を下ろした


―……何を見たんだろう?―


大久保さんの見上げた空を、私も仰いでみる
けど、視界に広がるのは、無数の星の煌めきと吸い込まれそうな暗闇だけ


「座らんのか?」


何時までも立ちっぱなしの私に、大久保さんが不思議そうに問いかける


「あっ……座ります」


切り株の空いてる方に、腰を下ろすと、付いた手が大久保さんの手に触れた


「冷たい……」


「すっ……すみません!!」


触れた手を、慌てて引っ込める


―っ!!?―


でも、その手を大久保さんは、難なく捉え自分の口元へ持っていく


「……寒いのか?」


温める様に包み込まれた指先に、大久保さんの息が触れる


「もっ、もう大丈夫です!!」


そう言って、大久保さんの手から自分の手を奪うように手を、引っ込めた
さっきまでは、凍りそうな程冷えていた指先が、一気に良くなった血の巡りに、トクトクと脈打っている


「くっ……くくっ……」


「何で笑うんですか」


私の質問に、大久保さんは、更に可笑しいと言わんばかりに笑う


「ふっ……真っ赤だな」


そう言って、私の頬に軽く触れる


「そんな事、ありません……第一、こんな暗闇じゃ見え無いはずです!!」


そう、否定してはみるものの、早くなった胸の鼓動が、熱くなった指先が……私の頬を赤く染めている事を象徴している気がして、軽く俯いた


「ほう?では……」


頬に触れていた手が、頭の後ろに回され、大久保さんの方に引き寄せられる


「なっ……!!?」





[ 7/40 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



【TOP】





「#年下攻め」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -