愛の巣
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諦めた私は手を広げてご機嫌顔でスタンバイしてる胸の中に戸惑いながらこてんと頭を預けた。
『お帰りなさい』
もう一度小さくそう呟けば、総司さんがニヤリと口許を緩め無邪気に“ただいま”と微笑み返してくれた。
「ねぇ、千鶴それより僕に言うことは?」
“何か忘れてるよ”と言われ腕の中で顔だけ動かし不思議そうに細められた瞳を見つめれば、唇に触れる総司さんの唇。
『んっ、...待っんぅ...やっ、待って下さい』
「ん、こら逃げないの。それよりさ千鶴言ってよ、ほら」
いきなり口付けするなり甘えた声で私を急かす総司さん。
全く言ってる意味がわからない。
「だから、お帰りなさいの次は“貴方、ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?”でしょ」
えっ、ええええええ、そんな事言えないですよ!普通!
「これくらい普通だよ」
私の心を読んだかの如くにんまりと笑いながら腰に回る腕が更に身体の隙間を埋めようと締め付けを強くした。
「うーん、そうだなじゃぁ先に千鶴を食べちゃおうかな」
『ちょっと、総司さん!私まだ何も...』
やや強引に抱き上げられ貞操の危機を感じた私はすかさず抗議の声を上げれば、軽く触れる彼の人差し指。
「ほら、お姫様は黙って僕に運ばれなよ」
優しく諭すように動く唇とは真逆妖しく弧を描く様はまるで飢えた獣。
そんな飢えた一匹の狼に千鶴の思いは虚しく寝室へと連れていかれるのでした。
***
『うー...もう、そろそろ離して下さい総司さん』
「んっ、駄目もうちょっと」
総司さんは私を壊れ物を扱うみたくベッドに降ろした後、ずっとこのまま。
組しかれ、食べられる、そう覚悟を決め瞳を瞑れば優しく降り注ぐキスの嵐。
もうどれくらいリップ音が続いているのだろう。きつく腕で身体を拘束され熱を含むとろんとした瞳で愛おしまれ唇を身体の至る所に落とされる。
正直、お酒の入ってる人は怖い。
私だって総司さんがお酒やらワインを飲む事は承知だし、会社の打ち上げとなればそれはもう酔い潰れるほど飲まされると思う。
本人は、加減くらい知ってるよ、なんていつの日か言っていたけれど...じゃぁ、何故こうなるのですか?
今までで一度も酔ってる総司さんなんてお目にかかったことがないし、現状をどう処理していいのかわからずされるが侭にされていれば一際大きなリップ音。
『痛...ぃ』
「ごめん、けど虫除けにはいいでしょ」
どうやら、独占欲の強い彼は服を着ても隠れない首筋に紅く跡を残したみたいです。
其だけでは止まらない彼は軽く謝りながらも離す気はないらしく何が枷を外してしまったのか私の服を脱がしにかかってきた。
『あっ、駄目、ん...やだ総司さん』
必死に千鶴が抵抗す間も頬や目尻、鼻先に触れる唇は止まる事を知らないらしい。
「はぁ、仕方ないなぁ...ならこれで我慢してあげる」
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