other | ナノ

二世タレント

母は女優として人気絶頂期に同じくアイドルとして人気だった父と結婚し、その翌年僕を生んだ。
世の中は人気だった二人の電撃結婚に驚きつつも『どうせすぐ別れるだろう』と囁いていたが、そんな周りの予想とは反対に結婚から20年以上経つが、今だ二人はラブラブなままだった。
その上テレビや舞台、歌番組などお互い仕事は忙しく不規則だが上手く調節し、時間を作っている姿を見ていたからか、芸能界はラクなんだと思い込んでいた。
そして何の疑問を持たず『これだったら僕でも出来そうだな』と18歳で芸能界入りをした。
最初は芸能界入りに反対していた両親だったが、諦める様子がない僕の姿に、それならと大手事務所の社長に口利きをしてくれた。
大手事務所なおかげもあって、人気な二人から生まれた僕は二人とは違い整った顔ではなかったが、仕事のオファーが止まらなかった。
ドラマにバラエティーとやっぱ芸能界はなんてラクで簡単なんだと思い毎日を過ごしていたが、ある時期を境にパッタリとオファーはなくなった。
社長に直接何故なのかと聞いても誤魔化され、理由を教えてもらえなかった。
だけど理由はすぐにわかった。
ちょっとした好奇心でネットで自分のことを調べると『二世タレントはもう飽きた』『親のどっちにも似てないブサイク』と誹謗中傷が多く書かれており、中には『絶対性格悪い』と予測からの批判もあった。
ポキッと心が折れた音がした。

思い返せば確かに過去に出演していた番組の全てに『◯◯の息子!』と大々的に二世を売りにしてやってきた。
だから話はいつも母や父のプライベート話や、過去の家族の面白エピソードをしてきた。
今まであまりプライベートを明かして来なかった二人の話をする僕に、最初はオファーが絶たなかったが、どこでも同じ話をしていたこともあって飽きられるのも早かったようだ。
飽きて用済みになった僕は何処にも売り出せないからきっと社長は誤魔化したんだ。

ネットで調べれば調べる程、書かれていることは辛いものばかりだった。
何故こんな赤の他人に色々言われなきゃいけないんだと怒りも感じたが、それよりも悲しくなった。
自分はそんなにダメな人間だったのか
顔も良くなくて、話も上手くなくて、演技も出来なくて
自分が傷付くだけだとわかっていながらも、調べる手は止まらず、気付けば涙で画面が見えなくなっていた。
この世界は僕には向いてない。







補足

prev / next

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -