真実の果て | ナノ






※注意※
長いです。
いわゆるバレネタです。
オリジナル300%です。

















真実の果て














手に入れた幸せに


自分で思っていたよりも


執着していたようだ














「え、ナルトいないんですか?」
「うん、火影様の勅命で外に出てるんだ。なので今日はナルトは欠席。」
「へぇ…だから代わりにシカマル君が来たんですか。」
「あー。手が空いてて丁度いい奴がいなくてよ。」

第7班は今日任務があるのだが、集合場所に着くとナルトはおらず、代わりにシカマルが来ていた。
理由は上の通りである。
だが付け足すとすれば、勅命は暗部としてのナルト、蒼波に下されたものなのだ。
昼は明るく元気なナルトも、夜になれば暗部総隊長の蒼波となる。
今回は少し手がかかる上に砂の里との関わりがあるので、砂と友好的なナルトが駆り出されたのだ。
まぁ、そんな裏事情は話せるわけもなく。
ナルトは言わないし、誰も知らない。
ヤマトですら知らないことだ。
知っているのは勅命を出した火影と代役で来たシカマル、策略部及び解部総隊長の狩黒である。
シカマルもナルト同様に裏の顔を持ち、持ち前の頭脳をフルに活用している。
ナルトの影分身でもかまわなかったのだが、ヤマトは九尾に関して敏感なので一応シカマルが来たのだ。

(大体、あんな時間のかかるのを任務がある日に出すなっつの…)

口癖ではなく、心からシカマルはめんどくせぇと呟いた。












「ナルトってば今度は何しに行ってるのかしらねー。」
「別の班の応援とかかな。彼は頼まなくても助けにいくし。」
「お前ら…他の奴の任務を詮索すんなよ。」
「そうだよ、それに僕達も任務中なんだからね。」

集中しなさい、とヤマトは前に向き直った。
7班の任務は火の国の上役の護衛である。
それなりに名のある人物らしいので敵が来る可能性は低くはない。

(7班の実力はそんなに心配するほどでもねぇし…まぁ大丈夫だろ。)

あいつも問題ないといいな、とシカマルは愛しい人を想って空を見上げた。













「ありがとうな、我愛羅。」
「問題ない。今度は任務ではなく、遊びに来るといい。」
「ああ、そうしたい。テマリとカンクロウにも世話をかけた。」
「大した事はしていないじゃん。」
「そうそう。道中気をつけて帰れよ。」
「ありがとう、それじゃあ。」

砂の三姉弟に別れを告げ、ナルトは砂の里を後にした。
ナルトの任務は我愛羅達の協力によってスムーズに終わった。
あとは帰って報告書を作成するだけである。

「7班にシカマルが行ってくれてんだよな…まぁヤマトもいるし、シカマルがそうそう出張る事もないだろう。」

大切な人の無事を想い、足を止めて彼の好きな空を見上げた。
















だがナルトの想いは天には届かなかった。




「サクラ!フォーメーションを崩すな!」
「サイ、籠につけ!」

もうすぐ目的地というところで7班は敵集団に襲われた。
最初は順調に敵を倒したり捕まえたりしていたが、何せ数が多かった。
今はヤマトとシカマルの指示が飛び交い、忍者ではない付き人達も守らなければならないので必死である。

(ちっ…このままじゃあんまり良くねぇ結論が出そうだ…)

シカマルはヤマト達の死角に入り、抑えていた力をもって敵と対峙した。

「しまった!」

しばらくの応酬の末、あらかた片付いたと思った時、ヤマトの声が聞こえてきた。

「どうした!」
「シカマル君、敵のリーダーが逃げました。追跡しますか?」
「あぁ、とりあえずネズミでも鳥でも後を追わせてくれ。ヤマト隊長、向こうは片づきました!」
「こっちも大丈夫だ。後はリーダーだけか…シカマル君を隊長に三人で行けるかい?」
「…了解です。ヤマト隊長は大丈夫ですか?」
「あぁ。恐らくこちらはもう襲われないだろうし。サイの鳥と、一応リーダー格だからね、念のためサクラの医療もあったほうがいいだろ。」
「わかりました、何かあればすぐ救援玉を。行くぞ、サイ、サクラ!」

逃亡したリーダーを追って三人は走り出した。
だが走り出してすぐ、シカマルは見知った気配を複数感じた。

(イノにチョウジ…っていうことは他の気配はキバ達か。)

イノとチョウジは8班と共にテロリスト集団の探索、計画阻止の任務が振り分けられている。
しかしシカマルの記憶では、任務地はこのあたりから大分距離があったはずである。

(めんどくせぇ。向こうも何かトラブったってことか!)

シカマルは気配がお互いに近づいていっているのを感じた。
そろそろキバやヒナタは匂いやチャクラに気付くかもしれない。

(まさか…)

このまま行けばかち合うかも、と思い立ったところでついシカマルは舌打ちしてしまった。
















「何だこれは…」

ナルトはつい足を止めてしまった。
里へと帰る途中の森の中が騒がしく、その中で動いている気配やチャクラはよく知っている人物だったのだ。
おまけに二方向から来る集団はこちらの方へと向かっている。
ナルトは仙人モードに入り、詳しく人物と位置を把握した。

「こいつら今日は別々の任務のはずなのに…追ってる敵が同方向に逃げたのか。」

偶然か?と疑問と不安を覚え、ナルトはそのまま足を止め、自分の方へ来る気配の様子を伺うことにした。
嫌な結果を覚悟しながら。














「…んん?!ヒナタ!向こうの方角を見てくれ!なぁんか知った匂いがするぜ。」
「う、うん。……あっ!シカマル君と、サクラさんに、サイ君だよ!」
「えぇ!?何でシカマルまでいるのよ!」

シカマル達が敵を追っている時、キバ達も同じように敵を追っていたのだ。
始めは予定通りうまくいっていたのだが、途中で敵が一人抜け出していたのがわかった。
それを追いかけてここまで来てしまったのだ。

「向こうも、敵を追っているみたい。あれ?ナルト君が、いない…」
「おそらくナルトは別任務か別行動で、シカマルは応援なのだろう。」
「おいおい。このまま行くと、かち合っちまうかもしんねぇぞ!」

会話をするうちもどんどん距離が縮まっている。
キバ達もシカマル達もはっきりと互いに気配を感じ始めると、すぐ双方の予測は当たることとなった。














ふと木々が途切れ、少し開けた場所にでた。

(予想が当たったか…)

シカマル達が追っていた敵とキバ達が追っていた敵は、驚くことなく出会い、こちらに向き直った。
明らかに二人は仲間で、何かあればここで落ち合うことを決めていたようだ。
そしてシカマルはもう一つのことに気付いた。

(…まさかお前までいるなんてな。)

目線は敵から動かさず、意識だけそちらに向けた。
任務帰りだったナルトである。
ナルトもシカマルが気づいているのを解っていた。

「仕方ねぇ。二人まとめてやっちまうか!」
「キバ、そう走ると危険だ。なぜなら、二人はわざわざ打合せをしてここに揃ったようだからな。」
「シノの言うとおりだよ。シカマル、どうする?」

チョウジがシカマルに声をかけると、全員が意識を向けるのがわかった。
みな、シカマルの指示に従うつもりのようだ。

「あー、めんどくせぇな。イノ、サクラ、サイ、シノは後方でサポートだ。キバ、ヒナタ、チョウジは前線で構えろ。」

そこは同期、即座に各自フォーメーションをとった。
すると敵は印を組んだかと思うと、土遁で地面から巻物をとりだした。

「…っ全員下がれ!」

「「口寄せ!」」

二人が手をおくと術式が発動し、大きな煙があがった。
シカマルが即座に声をあげたこともあり、全員が敵と充分な距離をあけられたのですぐ攻撃されることはない。

「な、何、あれ…」

サクラがつい口にしてしまった言葉は他の皆の思いも代弁していた。
煙の中からは巨大な動物が現れた。
いや、ただ動物と称していいのかわからない、生物である。
顔は猿だが胴体は狸のようで、足は虎、そして尾は蛇がついている。

「あれは…鵺か。」

ずっと様子を見ていたナルトは目を見開いた。
文献で知識としては知っていたが見るのは初めてである。
しかも鵺とはただの動物ではなく、一般的に妖怪と呼ばれる生物である。
その存在さえ未知であったのに能力については全く分からない。

(これは…ヤバイかもな…)

シカマルも内心困惑していた。
まさかここまで来て伝説に近い生物と出会うとは。
色々なパターンを考えるが、まだ情報が少なすぎだった。
とりあえず様子を窺うに仕方ない。

「やたらデケェし何か気味悪りぃなぁ。」
「…気をつけろ、あれは鵺だ。」
「古来からいるとされる妖怪の一種か…確かに危険だ。なぜならその全てが不明なのだから。」

シカマル達が構えようとすると、鵺が大きく鳴いた。

「うわ、すごい声!」

イノはつい耳を押さえたが、鳴き声は空に響いた。
すると鵺の身体からパチッという音と共に黒煙が立ち上った。

「…っ!」

とっさにシカマルは全員に影真似をかけ、後方に伏した。
すると先ほどまでいたあたりに稲妻が降り注いだのだ。

「あ、ありがとうシカマル!雷系なの、こいつ?」
「あぁ。文献によっては雷獣なんじゃないかとも言われている。」
「すごい…」

ヒナタはその姿に感嘆の息を吐いた。
奇妙な容姿ではあるが雷と暗雲を纏う姿は、確かに雷獣という名が相応しい。
だが次の瞬間鵺は飛び上がり、先ほどより多くの黒煙を纏った。

(しまった、連続でもいけるのか…!)

今度はシカマルの影真似も間に合わない。
鵺の鳴き声が更に響いた。








(もう、ここまでか…)






何もかも






「風遁、風切り。」








突如現れた風は雷を切り裂き、シカマルを守った。
眩しさに逸らしていた目を正面に向けると、赤く長い髪をなびかせる暗部が一人立っていた。

「蒼波様…」

シカマルは誰も聞こえない小さな声で、苦しげにその名を呼んだ。
蒼波が、ナルトが出てきたのだ。

「加勢する。お前達は離れろ。」
「一人では危険です、我々も…」
「巻き込まれて邪魔になるだけだ。行け。」

サイが声をあげるも蒼波は言葉を遮った。
確かに先ほどの術を見れば実力差は一目瞭然。
キバなどは不満げながらも皆後退しようとした。
シカマル以外は。

「…お前まで出ることはない。」
「貴方が出てきたというのに、私が出ないわけには参りません。」
「狩黒、戻れ…」
「貴方が太陽の下を去るのなら私も共に。」

いつのまにか赤髪の暗部の隣には黒髪の暗部が立っていた。
狩黒、シカマルである。
結局蒼波は観念したとでも言いたげに肩をすくめた。
そして二人同時に地面を蹴ると鵺に向かっていった。

「あれ、シカマルがいないよ!」
チョウジの言葉に全員が後ろを振り向いた。
後ろには鵺に向かう二人の暗部しかいない。

「どこに…」


キィーン



ハッと皆顔を上げた。
聞き覚えのある高音に反応したのだ。
風とチャクラが高密度に混じり合う、螺旋丸の音に。

「螺旋丸。」

鵺は雷が弾かれ大きく地面に叩きつけられた。
それを放ったのは先程の見知らぬ赤髪の暗部。
だが、螺旋丸を操るのは皆の知る中では一人しかいない。

「ナ、ナルト君…?」
「そんな!暗部にもなれば風遁を使う人間くらい…」
「…いや、風遁を使う人間がいたとしても螺旋丸はナルトしか使えないよ。」

あとはせいぜい写輪眼を持つカカシ先生位だ、とサイの声がやけに響いた気がした。
何故、ありえない、という疑問と同時にどこかあれはナルトかもしれないという思いもわく。
そしてその隣で闘う彼は、突如消えたシカマルなのか、と。

「影縛り」

狩黒の術によって、鵺の巨体がガッチリと黒い腕のような影に捕獲された。
ギリギリと音をたてているが鵺は全く動けない。

「鵺よ…雷獣とまで言われるお前をこうするのは申し訳ないと思う。許してくれ。」

蒼波は巻物をだすと印を組んだ。

「封印…」

光があふれたかと思うと、鵺の姿はそこにはなく巻物の印の中には鵺の文字があった。

「蒼波様、お怪我は?」
「ない。…お前もないな。」
「はい。」
「…離れろと言ったのに。」

蒼波はため息をついて後ろを振り返った。







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