恋人との甘い1ページ
身体を繋げて変わったことがある。
まずあれ。
「急に会いたくてなってね…。」
ふいに夜、ヤマトさんは私の家に来るようになった。私が上手く言えなかったあの言葉を添えて。
実は今日も急に訪ねてきた。とっても嬉しい。
あと、あれだ。
これはちょっと驚いた。
私の前でよくお酒を飲むようになったこと。
ヤマトさんはいつも居酒屋に行っても嗜む程度しか飲まなかった。
家でご飯食べる時や温泉宿に泊まったときなんて一滴も口にしなかった。
勧めても、いや、やめておくよ。て。
でも、カカシさんが以前3人で飲んだ時に教えてくれた。
「こいつ本当は結構飲むよ。」
嘘だぁ!て、思ってたんだけど…本当だった。凄くお酒が好きみたい。
彼曰く 「だって、うっかり襲っちゃいそうだから控えてたんだ。」 ならしい。
いや、結局うっかり襲いましたよね。
と思ったけど、彼はあの時のこと結構気にしているから心の中で留めている。
そして今、私の隣で焼酎を手酌しているヤマトさんはちょっと呂律が回っていない。
いったい何杯目?
「だからね、カカシ先輩はね、ほんっとうに仲間を大切にしててね、僕の一番尊敬する人なんだ。でも、あの人はさ僕を玩具か何かと思ってるんじゃないかと思うときがあるんだ。」
そして、その話何回目?
「名前!僕の話聞いてる?」
「あー、はいはい。聞いてます。」
テレビに目を向けながら適当に相槌を打っていたら、ずばり聞かれてしまった。
「…どうせ面倒くさいやつだとか思ってるんだろ。」
うん、思ってた。
でも、私のいい加減な返事を受けションボリするヤマトさんに思わず笑みが零れてしまう。
「いやいや、カカシさんのことが大好きなヤマトさんって可愛いなぁて思ってましたよ。」
彼の目は潤み、そして頬は上気している。
そう。すっかり出来上がっている。立派な酔っ払いだ。
初めて舌足らずな喋り方をする彼を見た時、かわいい!て胸がキュンっとなった。
でも、最近は面倒臭さが増してきて6対4でギリギリ可愛いが優勢って感じ……
慣れてくると結構面倒くさい絡み方してくる人だと思ってしまう。
「君はさいつも僕を可愛いっていうけれど、僕としてはカッコいいのを目指しているんだからね!カカシ先輩みたいなさ!失礼しちゃうよ!」
必死の形相でカッコいい系を目指しているとか暴露し出す始末。
この人きっと明日の朝、思い出して恥ずかしがるんだろうな。
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」て、頭抱えて。
想像したら……駄目だ。
私は込み上げる笑いを目の前の梅酒を飲んでなんとかごまかした。
「だから、そういうとこが可愛いんです。」
「なんだいそれ…意味がわからない。」
ちょっと面倒くさいけど、彼の今までになかった言動を見れるのはやっぱり嬉しい。
「初めて会った時は、こんな人だとは思わなかったです。」
「それをいうなら君だってそうだろう。もっと落ち着いた子かと思ってた。」
「酷いや。」
「でも、知れば知るほど好きになっていくよ。」
「…それはどうも。……あの耳元で囁くのは止めてもらえますか?」
お酒が入って饒舌になったヤマトさんは甘いセリフも2倍吐く。
今、私の頬が赤いのはアルコールのせいだとは言い切れない。
なんでそんな恥ずかしいことをスラスラと言えるんですか。
そして、私の胸は高鳴ってしまっている。
すっかり彼の手の内だ。
「君はどうなの?こんな僕は嫌?」
「知ってるくせに。」
好きって言わせたいんでしょ?
途端に強気な顔しちゃって。
このところの彼の押しの強さには参ってしまう。
「言っておくれよ、君の口から聞きたい。」
「…きらい。」
「……なんだよソレ。」
これ以上相手のペースに乗せられるのも癪で私の天邪鬼が発動してしまった。
するとヤマトさんは唇窄めてあからさまにいじけちゃった。
ちょっと酷かったかな。
「嘘ですよ。すきすきー」
「……えらく適当な言い方だね。」
視線はテレビに向けたまま、軽いノリで訂正。
これでも私は十分恥ずかしい。頑張った方でしょ。
チラリと目線を向けると不満げな顔のヤマトさんと目が合った。
「いいさ、後でたっぷり聞かせてもらうよ。ベッドで。」
「…………。」
このところ彼には勝てない。完敗だ。
でも、負けてもいいって思ってしまう私はヤマトさんにべた惚れ。
たぶん、いや絶対に私の方が好きが多い。
悔しいからこれは内緒。
おしまい