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噂の隊長さん

「えっ?ヤマト隊長と会ったんですか!?」
「そうそう。サクラちゃんにと思って、この本を探しに行ったらバッタリ。とてもいい人ね。」

名前さんはちょっとばかし分厚い“湿地帯の薬草大全集“を私に差し出した。

「この本は全ページカラーで表記もわかりやすいから参考になると思うの。」

すいません、名前さん。
この本も凄く興味深いんですけど、ヤマト隊長と?バッタリ?

私の思考とは反対に名前さんはヤマト隊長の話題をすっかり流して、ニコニコと本の説明を進めている。
ああ、隊長のことが気になって話に集中できないじゃない!

「参考にさせてもらいます…それで……ヤマト隊長どんな感じでした?」

気になる!気になる!
だって、カカシ先生に聞いちゃったんだもん!


火影室に任務の完了報告をしに行った時だった。
報告を終えたあと、カカシ先生はにたぁーと嫌な笑みを浮かべた。

「ねぇねぇ、サクラ。テンゾウのやつ好きな子いるみたいよ。」
「えー!そうなんですか!?」

てっきりカカシ先生と付き合ってると思ってたのに!

「その相手がさぁ…知りたい?」

カカシ先生の目はそれはもう厭らしいほどニヤニヤしていた。
これは完璧に隊長で遊ぶ気ですね。
かくゆう、私もニヤニヤ。
こんな面白い話、聞くっきゃない!

「誰ですか?」
「名前ちゃん。」
「マジですかー!?」

思わず頓狂な声が上がった。
ヤバイ…ヤバイな……隊長ごめん!
今まで散々、愚痴やらホモ疑惑を話しちゃった!

「サクラさ、名前ちゃんと仲良いんでしょ?」
「仲良いですよ。お昼ごはんとかよく一緒に食べます。」

そう、仲良しなのだ。
名前さんは見た目可愛いお姉さん。
だけど、話してみると歳の差なんて感じさせない。
凄く気さくで茶目っ気ある人だ。
それに薬草学の知識が豊富で、かといって威張ることなく謙虚で本当に素敵な人。
私の恋の相談だっていつも真剣に聞いてくれるし。

「ねー、サクラ。ここは俺ら二人でテンゾウに協力してあげようよ。」

カカシ先生…
発言はとてもいい人ですけど、やっぱり顔が面白がってますよ。

「まぁ私も隊長にはお世話になってますし、応援したいのは山々ですけど…名前さん里で恋愛する気はないって断言してますよ。」
「それは俺も知ってるけどさ。」

そしてカカシ先生はニコリと笑い続けた。

「でも、あの二人お似合いだと思うんだよネ。」


そんな会話をしたのが、ついこの前だ。
だから今度会った時は愚痴じゃなくて隊長の株が少しでも上がる話をしよう!と思っていた。
それがまさか名前さんの方から話を出してきたもんだからビックリよ!

名前さんは、ヤマトさんね、ふふふと、何やら思い出し笑いをしてから話し出した。

本屋さんで本を床に落としていたこと
窓枠の修理を買って出たこと

「……それに表情がコロコロ変わって意外と可愛らしい人ね。とても親切で優しくて話しやすかったわ。凄く楽しかった。」

名前さん、めちゃくちゃ笑顔が零れてますよ。

名前さんはモテる。
でも、ライドウさんに告白された時もアオバさんにアプローチされていた時も一刀両断。

恋愛は興味ないんで
とか
里で恋愛する気はないんです
とか、キッパリ断ってた。

「ねぇ、サクラちゃん。ヤマトさんってどういう物が好きかな?修理のお礼がしたいんだけど、いい物が思いつかなくて。」
「うーん。なんでしょうね。」

正直なところ、隊長にあんまり興味ないしわかんない。

「あっ!そういえば、クルミが好きって言ってましたよ。任務の時もよく持ち歩いてますもん。」
「じゃあ、クルミのお菓子でも渡そうかな。」

真剣な顔で呟く名前さん。
男の人絡みでこんなに一生懸命なのは初めてじゃない?
もしかすると、これは脈ありかもしれないわ。

「ね!ヤマト隊長みたいな男の人ってどう思います?」
「どうって?」

質問の意図がよくわからないのか首を傾げられてしまった。
そんな名前さんに私は少し顔を近づけて詰め寄った。

「もし告白とかされたらですよ。どう思います?」

すると名前さんは目をパチパチさせ驚き、顔の前で手をぶんぶんと振った。

「どうって…いやいや、まずヤマトさんが私のこと好きとかそういう時点でないから、うん。考えるだけムダだよ。」 

いつもだったら真っ向から切り捨てるのに
これはホントにひょっとして、ひょっとするかも……!

でも名前さんはすかさずあの一言付け加えてきた。

「それに里で恋愛する気はないしね。」

やっぱりきたか、このセリフ。

「じゃあ、もし告白されてもふっちゃうんですね。」
「だからサクラちゃん!そんなこと起こりえないってば!」

名前さんはほんのり頬を染めて必死な形相で言い返してきた。
この反応はやっぱり脈アリでしょ!

「もしもの話ですよ。」

さらに私は詰め寄ってみた。
すると目線を私からそらし、少し間をおいてから名前さんは小さく呟いた。

「…うん、そうね。断るわ。」

きっと今、春には帰るんだからって思ってるのかな。
綱手サマからはまだ悩んでるって聞いてたけど
やっぱり故郷に戻っちゃうのかな。
こればっかりは私が口出しすることじゃない。

ヤマト隊長、名前さんの気持ちを動かせるかなぁ。
もう!私が一肌脱いであげないといけないじゃないの!